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ほんの少しだけ、ここで「知っている」と打ち明けてしまおうか迷った。
打ち明けて、オレに頼ってほしいと思ってしまったんだ。
そうじゃないとAがそのうち壊れてしまうんじゃないかと思う。
人が抱え込める量なんてものは最初から決まっていて、Aの肩に乗っかった重荷はもう既に重量を越えてしまっているように感じる。
特に最近は生き急いでいるかのように作業の予定を詰めこんでいた。
一応夜になれば帰って来るけれど、ベッドに入ったところで眠りが浅いのか、部屋を出ていくことだって少なくない。
その背中を追えば、静まり返ったリビングで塞ぎこんだように膝を抱えて天井を眺めていた。
誰にも知られたくないと、知っていてほしくないと、そう敬遠しているAの殻を破るのはそんなにいけない事だろうか。
だってこいつは、手を差し伸べてるだけじゃ絶対に掴んでくれない。
それなら誰かが無理にでも手を引かなきゃいけないんじゃないか?
頭に浮かぶのは事情を知っているあの二人。
ジスヒョンもスンチョリヒョンも、何をそんなに日和っているのだろうか。
「そりゃそうだろ。オレは毎日Aが飯を食べてるのか、きちんと眠れているのか気になってしょうがないんだから」
「そこまで思われてるなんて初耳なんだけど、ウォヌはお母さんみたい事言うね」
「でも母親役はミンギュなんだろ?」
「なんで?」
「知らないけど、ウジがそう言ってた」
「いつの間に家族構成が……?」
腑に落ちない顔をしてAが首を傾げる。
だんだんとゆっくりになってきたその足取りは、オレとは違ってそれほど重いものじゃない。
「ウォヌ、ウォヌにだけ話すけど、」
「うん?」
「元気な振りをしてるんじゃなくて、少し考え事が多くて息が詰まってたんだ」
「へえ」
「ウォヌを散歩に連れ出したのは、聞きたい事があったっていうのもあるけど、一人だと嫌な事ばっかり考えちゃうから」
「嫌な事って?」
「そろそろやめなきゃいけない事がやめられないとか、どうすればみんなに嫌われずに生きていけるか、とか」
おかしな事を言い始めるAの顔を横目で覗く。
ずいぶんと真剣な顔をして、暗く続く前だけを見据えていた。
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せの(プロフ) - 奈子さん» ありがとうございます! (2019年6月23日 0時) (レス) id: 73addbec04 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - いつきさん» ありがとうございます!ページの都合で一旦消したのですが、先程再投稿しました。お時間があるときにでも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年6月23日 0時) (レス) id: 73addbec04 (このIDを非表示/違反報告)
奈子 - 評価一個じゃ足りないです、、!!!すごく大好きな作品です!! (2019年6月22日 18時) (レス) id: a598e2ddc7 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - この小説の雰囲気がとても好きで、投稿されるのを楽しみに待っています。突然なのですが、今日出した続編は削除されてしまったのですか?スンチョルさんとの話はとても面白かったので少し残念です…これからも頑張って下さい! (2019年6月22日 15時) (レス) id: 317f2047c2 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - kinosuke20さん» 評価もコメントもありがとうございました。がんばります! (2019年6月22日 10時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せの | 作成日時:2019年6月6日 10時