男装生活とその日常について３ (ページ5)

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夢中になってそんな事をしていれば、始まる時間はすぐそこまで来ていた。

皆それぞれ目を覚ましたり、欠伸をしたり、メイクを直しにいったり、なぜか筋トレを始めたり。

そろそろAも起こした方がいいかもしれない。

「A、起きて～」

「……ん」

「もうすぐ始まるよ」

「ああ～……」

前髪をくしくしと毛づくろいするように掻き分けて、Aがゆったりと目を開く。

僕たちの前を通るホシが「よだれ垂れてんぞ」と嘘をついて去っていった。

Aが手の甲で口元を拭っているのを、メイクは大丈夫かなぁと顔を覗き込む。

そうすると「ジュニは今日も綺麗な顔だねえ」なんて、寝起きの心地よさそうな余韻を残しながら褒めてくれた。

誰だってそう言われると嬉しいものだ。

少しだけ癖の付いたAの髪の毛に指を通す。

「Aも綺麗だけど、リップはちょっと取れちゃってるかも」

「あらら……」

鼻声で返事をしながらふわっと両手を高く持ち上げて、背中を伸ばしながら頷いた。

メイクさんに引き摺られたAが戻って来たのは、ペンサの始まる直前だ。

もう眠たげな目はしていないけど、なんだか背中がいつもより弧を描いている気がする。

まだAの身体は起きていないのかもしれない。

Aの隣に座って一つずつ丁寧にサインを書いていく。

時間が空けば二人でにハートを作ったり、反対側のウォヌを巻き込んでもっと大きなハートを作ったり。

あっと言う間に時間が過ぎていき、トークが始まればそのまま三人揃って後ろの方へ下がった。

騒ぎ出すメンバーを穏やかに見守る。

JN「A、今日ずっと一緒だったね」

＿「ここでも隣だったのはラッキーだったなぁ。今日はジュニが一番元気そうだからお世話になろうと思ってねぇ～」

JN「うん？」

僕とウォヌの間に挟まれたAの語尾が、やけにゆっくりとしている。

女の子達への受け答えはいつものように完璧だったし、こんなに呑気そうな声でもなかった。

ペンサはなかなかに頭を使う。

疲れたのかな。

まあ疲れていることに間違いはないだろうけど。

一瞬の忙しさが落ち着いたせいで、また眠気がやってきたのかもしれない。

WN「お前、今日本当に猫みたいだな」

＿「ん？」

WN「ボノニが言ってた、『Aが猫になった』って」

JN「僕もさっきそう思った」

＿「ええ……」

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