男装生活とその日常について３ (ページ14)

今日:6 hit、昨日:136 hit、合計:701,315 hit

７ページ14

.

「いや、着てたよ。ちゃんとサポーターしてた。わあ、びっくりしたぁ……」

「こっちのセリフなんですけど？」

「いつも二枚着けてるんだけど、誰もいないから上に着けるサポーターはいいかなって……油断してた……」

「別にいいじゃないですか、せっかくの休みなんですし」

「だめだめ、着替えてこないと」

頬に伝った涙を手の甲で拭い、Aヒョンが明るい表情を作る。

本当に泣いてたのかと思うとどうしても胸が締め付けられてしまう。

「ごめんスングァニ、オレが抱き着いた衝撃で荷物落としちゃったね」

「ま、まあ……確かに、衝撃的ではありましたけど……」

「割れ物とかじゃなかった？ちゃんと弁償するから確認だけしといて」

「弁償も何も、僕とヒョンのご飯なので大丈夫ですよ」

「え？」

しゃがんで保冷バッグのジッパーを開け、保冷剤を退かしておかずの入った容器をヒョンに見せる。

それを見て「わあ」と感嘆の声を零して、僕と同じように屈み、ヒョンはきらきらと目を輝かせた。

うん、やっぱり。

僕はAヒョンのこういう表情が好きなんだなぁ。

「着替えてくるから待ってて」と足早に部屋に向かったヒョンはすぐに戻ってきた。

ヒョンの首はまた黒いサポーターで覆われていて、ほのかな罪悪感に襲われる。

それを悟ったのか「着けてないと落ち着かないんだよ」と笑うけど、「さっき着てなかったでしょ？」と返せば、露骨に目を逸らしてくるのが面白い。

「実は朝ごはんまだなんだ、食べてもいい？」

「ちょうどよかった。ヒョン、またご飯抜くところだったんじゃないですか？」

「一応ご飯は炊いたんだけど……そこは誉めてほしいかな」

浮かれたように笑いながら、ヒョンがおかずの入った容器を物色してキッチンに持っていく。

レンジに入れて温めたり、鍋に移して火にかけたり。

そうするとリビングの中に嗅ぎなれた香りが広がる。

ほんのちょっとだけ家が恋しく感じたけれど、「グァニも食べるでしょ？」と目を細くするヒョンを見ると、帰って来て正解だったんだと確信した。

朝から食べきれないほど、リビングの机におかずを並べたAヒョンが、箸を持ち上げて手を合わせた。

.