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「僕もAの育った場所を散歩したいなって思ってたところ」
「……なんだシュア、オレが家に行くってわかってたの?」
「わからないとでも思った?」
「うん、言ってなかったから」
「言われなくてもわかるよ、Aの事くらい」
「そっか」
そう言って、Aがゆっくりと歩き出す。
どこにあるのか分からないAの家に向かう道中、Aが古い記憶を思い浮かべて、僕に説明をしてくれる。
あそこに見える家にいじめっ子が住んでいたとか、あの店でよく買い食いしたんだとか、遠くに見えるその学校へ通っていただとか。
昨日とは反対で、今日はAのアルバムを見ているようだった。
一枚一枚、丁寧にページが捲られていく。
歩きながら話している途中、どこかで見たことのあるような教会が目の前にぽつりと現れる。
空き地に生えた大きな木に隠れていたせいで、一番高いところにある十字架は今の今まで見えなかった。
外観を眺めながら記憶を辿ると、それは確信に変わる。
いつだったか、聖歌隊の活動で僕はここに来たことがあるようだ。
外から見えるステンドグラスの色や、上に取り付けられた鐘の形。
そうだ、覚えている。
そう言おうとAを見ると、僕が驚いた顔をしたのがよほど意外だったのか、クスクスと笑い声を滲ませて横目で独り言をするように呟く。
「ああ、よかった」
「なにが?」
「シュア、この教会に来たことあるでしょ」
「うん」
「ここでシュアの事見たことある気がして。シュア、聖歌隊にいただろ?」
「いたけど、」
「聖歌隊の子がたくさん来るって聞いて見に行ったから。その中に、オレ達と似てる男の子がいたのに気付いて」
「それが僕だった?」
「きっとね」
「……なんで教えてくれなかったの」
「違ってたらどうする?それなら解らない方がまだマシだよ」
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せの(プロフ) - 月さん» ありがとうございます! (2019年5月15日 16時) (レス) id: 3e57787c43 (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - なんか、言葉の使い方が素敵過ぎます。 (2019年5月14日 23時) (レス) id: 609dad9df5 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - 神田ニエル。さん» ありがとうございます! (2019年5月13日 15時) (レス) id: 3e57787c43 (このIDを非表示/違反報告)
神田ニエル。 - シュアと夢主ちゃんの関係が素敵で禿げますw (2019年5月12日 0時) (レス) id: 4450166156 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - rinさん» ありがとうございます! (2019年5月11日 14時) (レス) id: fc9298decc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せの | 作成日時:2019年5月4日 20時