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ヒョンと、一つ一つ丁寧に確認をしていく。
事前に動画が送られてきていたからだいたいは覚えているし、あとは角度や動線、それにタイミングを調整していくだけだ。
幼い子供ほどの語彙力しかないAヒョンが、オレを褒めてくれる。
ああ、これが面白くて好きだ。
『な〜んだ、ミンハオ。ほとんど出来てるから教え甲斐がないなぁ』
『そんな事ないよ』
『もう一回合わせようか』
『ん』
鏡の中でオレとAヒョンが隣に立つ。
ウジヒョンの作った音楽が流れ始めると、鏡越しにヒョンと目が合った。
オレもヒョンも細身な事が共通点ではあるけど、それでもこうやって横に立ち、二人で隣り合わせになったところを見るとAヒョンを小柄だと思ってしまう。
身長はウジヒョンやディノよりも高いのに、肩や体の幅が狭い。
Aヒョンの手足が長くてよかった。短かったら苦労しただろう。
曲が終わり、ピタッと動作が止まる。持久力の無いAヒョンは「ああ〜」と息を吐いて床に寝転ぶ。
少しだけ濡れた前髪を撫でつけて笑うヒョンの隣に座る。
『あとは全体練習の時に合わせれば完璧だね〜』
『ヒョン〜ありがと〜』
『ハオ、お茶あるよ〜ぬるいの〜』
『ヒョン〜』
『わ〜』
ケラケラと笑いながら匍匐前進でカバンに向かっていくAヒョンの上に乗っかる。
頬をペチペチと叩きながら『お疲れ〜』と甘やかされるのは、二人でいる時くらいしかやってくれない。
まだ少しへたくそな中国語も、労う言葉だけはすらすらとキレイな発音で伝えてくれる。
口には出さないが心配しているんだろう。
そればっかりが上手くなるのはなんだか癪だけど。
『あと三十分あるよ。少し寝る?』
『今寝たらもう起きらんない気がする』
『じゃあシャワー浴びて撮影場所まで移動しようか。頭はあっちでセットする時に乾かしてもらえばいいし』
『今日ハウススタジオだっけ、遠い?』
『近いよ。車で3分もかからないかな?』
『いこ!ヒョン、立たせて!』
既に立ち上がって、首の汗を拭っていたAヒョンに手を伸ばす。
忙しい間は多少甘えたところで、どうせこのヒョンは嬉しそうな顔で受け入れてくれるのだ。
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せの(プロフ) - あゆさん» ありがとうございます! (2019年5月29日 9時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 初めまして。男装モノ大好きです。シリアスも好きです。(要らない情報) (2019年5月28日 17時) (レス) id: 0c6540a428 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - 冴木薫さん» ありがとうございます!多分直りました (2019年5月15日 16時) (レス) id: 3e57787c43 (このIDを非表示/違反報告)
冴木薫(プロフ) - 初めまして!とても楽しく読ませていただいてます! 読んでて少し気になったのですが、たぶん名前変換のところがたびたび_になってます… もしかしたらあたしだけかもしれないですが、もしお時間があれば確認していただけませんか? これからも執筆活動応援しています! (2019年5月15日 14時) (レス) id: 3ed73169f6 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - 殺し愛さん» ありがとうございます! (2019年5月3日 20時) (レス) id: 73addbec04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せの | 作成日時:2019年4月24日 23時