ぶきようなにんげん２ (ページ3)

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(ジスside)

今日で最後にするつもりだった。

好きな子と一緒に過ごせるだけで十分だったから。

少し欲張りすぎたみたいだけど、ずっと前からAちゃんの気持ちはわかっていた。

生まれ変わりでもしないかぎり、振り向いてもらえないってこと。

もう一度ミンギュと出会う前からのAちゃんとやり直さなきゃ、いつまでたっても僕はミンギュに勝てないってこと。

ずっとずっと、気付かないふりをしていた。

今すぐにでもAちゃんを自分のものにしたいと、いつも心の底で蜷局を巻いているいじわるな自分に負けないように、綺麗な言葉を並べてきた。

でも、本当の本当に最後、僕の想いくらい打ち明けたって罪にはならないよね？

嫌なんだ、ミンギュの元へ帰っていくAちゃんを見るのが。つらいんだ。

少し俯いたままのAちゃんに、そっと話しかける。声が震えているかもしれない。

「…Aちゃんに彼氏ができるまで、バイト帰りはきちんと送るよ」

『そんな、気にしないでよ…ウォヌもいるし』

「ううん、今まで通りがいいんだ。何も変わらず、今のままがいい」

『…わかった、じゃあお願いしようかな。でも彼氏なんてそんなすぐにできないからね？』

「待つよ、Aちゃんが幸せになるまで。」

『ジスくん、』

「僕が幸せにしてあげたいんだけど、それは無理みたいだから」

そんなことない、と、顔をあげて僕を見つめるAちゃんの瞳は大きく見開いていた。

『わたし、こうしてジスくんとご飯食べたり、お話したりできるの、とても幸せだよ？』

「Aちゃん、」

『わたしはとっくの間に幸せなんだよ？

彼氏がいるからって幸せになれるとは、限らないんだよ…』

「…Aちゃん？」

そうして再び俯くAちゃん、声も少し上ずっていて、まるで、今にも泣きだしそうな、

「…ごめん、僕の価値観を押し付けちゃったみたいだ。幸せなんて人それぞれなのにね。」

『うん…、謝らないで、なんでもないから』

「…食べようか」

『うん、冷めちゃうね』

僕の気持ちのそのまま冷めてくれれば、こんな想いもせずに済んだのかな、なんて皮肉っぽくなってしまった。

誰も悪くないのにね。