ぶきようなにんげん２ (ページ13)

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≪ばいばい、A≫

『うん…』

≪もー、最後くらいばいばいって言ってよ！≫

『んー…』

≪…じゃあね、A≫

『……』

ばいばいが、言えなかった。
言ってしまったら何もかもが終わりそうで、怯んでしまった。

でも終わった。
全部これで終わったんだと、真っ暗になった携帯の画面を見つめ続けた。

もう何にも縛られることもない、また普通の生活に戻るだけなんだ。

望んでいたことなのに、あの日のような、心にぽっかりと穴が開いてしまった。

『何が良い一年にして、だよ…呑もう』

良い一年にするためにはまず呑まなくちゃいけない気がして、家に残っているお酒に手を出す。家で一人で呑むなんてはじめてだった。

でも、静かな場所で何も考えず気持ちよくなっていく感覚は、嫌いじゃない。

せっかくのお正月だもの。どうせまたバイトも始まるし、それまで休まなくちゃどうするの！そんな気持ちで、気付いたら呑んでは寝て、呑んでは寝ての生活サイクルに嵌ってしまった。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「くさい」

『はい』

気が付けば仕事始め。
初詣以来に会って早々ウォヌにくさいと言われた。失礼にも程がある。

「二日酔いか？」

『いいえ』

「酒くさいんだけど、どこでそんなに呑んだくれてるわけ」

『家』

「自分の？」

『うん』

「誰と」

『1人』

「それは笑うわ」

『結構楽しいよ』

「今夜はやめろよ、これからまた仕事始まるんだし」

『だって…』

「言い訳すんな、酒くさいから勘弁してくれ」

『失礼ね』

「失礼なのはアンタだよ、接客すんだから」

『じゃあ一緒に呑もうよ』

「は？」

『家に来てよ～寂しい』

「お前まだ酔ってんの？今日はもう帰ったら？」

『そうしてもいい？』

「…良いけど待ってろ。送るわ。だるいなら休憩室で寝てろよ」

『だるくはないけどねむい』

「寝てろアホ」

ひどい。くさいとかアホとか、ほんとに私への扱いが雑になった。
お酒が抜けてないのかふわふわする。
冷静に考えてもダメ人間すぎて落ち込んできた。

結局ウォヌのバイトが終わるまで休憩室で寝てしまった。
ほんと、年明けてから寝るか呑むことしかしていない…このままだとダメ人間を極めることになりそう。少しゾッとした。

でもなんだか、頑張るものがないんだよな。

この消失感はどこから来るんだろう。