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振り付けの確認をしていると、少しずつ体があったまってきた。
こうしていると、月末評価のことを思い出す。
私が初めて作った曲。
pledisのとき、泣きながら披露した曲。
ジヨンが退社する時、最後にみんなで踊った曲。
SiLiusで、みんなと悩みながら作った曲。
ジョンハン先輩と、自信をつけた曲。
私は今、ひとりだ。
思い描いていた、メンバーに、大勢のペンに囲まれる未来とは程遠い光景だけど、何故かしっくりきていた。
1人で、その場にいる全員の注目を浴びる。
どれだけ観客が少なくても、全力でステージを終えよう。
そんなことを思いながら、曲をスタートさせた。
ジョンハン先輩に、イメージとして聴かせた曲。
私は、ステージの後に記憶が残らないタイプだ。
正確に言えば、その瞬間に全力を出し切るから、気づいたら終わっていることが多い。
だけど今日は、全てのことが鮮明だった。
初めて、知らない人の前でパフォーマンスをした。
私のすること一つ一つに驚いてくれる小さい子や、珍しげな視線を向けるカップル、携帯で私を撮る高校生。
全部見えた。
ステージに、ハマった瞬間だった。
この曲を最後に帰ろうと考えていたから、みてくれた方にお礼を言って片付けようとしたとき。
立ち止まっていた高校生が近づいてきた。
「もしかして、アイドルの方ですか?」
嬉しかった。
まだまだ自分は未熟だと、デビューなんてできるレベルじゃないと思っていたからこそ、嬉しくてたまらなかった。
「違いますよ。練習生はしていたことがありました。」
平静を装って伝える。
「あー!本当に上手ですね。もうアイドルはされないんですか?」
「今も、夢を追っている最中です。これもその一環で。」
「そうなんですね!曲、すごく良かったんですけど、誰のやつか教えてもらっていいですか?」
「オリジナルなんです。」
そういうと、目の前の子は大袈裟とも言えるほど大きな声を上げた。
こんなに幸せな日があっていいんだろうか。
ただただ胸がいっぱいで、嬉しくて涙が溢れそうだった。
受験生なんですけど、すごく、安心できます。
そう言ってくれた。
「時間が大丈夫でしたら、アンコールお願いしても?」
もちろんです。
私は、このために生きているんだと実感した。
誰かを、自分の曲で、声で、パフォーマンスで感動させるために。
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!?(プロフ) - え、なんでこんな残酷なんだ……えぇ…ぇぇぇ… (2023年1月30日 21時) (レス) @page16 id: f95a2e532b (このIDを非表示/違反報告)
千笑 - まるさん» 外し忘れてましたね。申し訳ないです (2023年1月9日 17時) (レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - オリ‘フラ立ってますよ!外して下さい! (2023年1月9日 16時) (レス) id: d16c4af477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千笑 | 作成日時:2023年1月9日 14時