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兄にもいくつか教えてあげたけど、毎回口パクで
“
と返される。
口パクかどうかは、喉や唇の動きを見ればわかるようになった。
夏休みが終わりに近づいても、私の世界に変化はなかった。
相変わらず耳は聞こえず、相変わらず手話を習っている。
最近では簡単な会話程度なら可能になってきて、手話を生かした職業に就くのもいいかも。
なんて思い始めたところだ。
少しずつ気持ちの整理がついてきて、悔しくて、もどかしくて、苦しくて眠れないことが減ってきた。
前向きに生きる、ということが少しずつでき始めていた、そんな時だった。
1日に2回ほどくる、兄からの連絡。
【デビュー曲の作曲依頼受けた。】
【へぇ】
兄からのカトクは、そこで止まっている。
なんだったのだろうと思い読んでいた本に視線を向けなおしてから数分後、再度携帯が震えた。
【お前の友達、俺のペンっていう練習生。その子の曲、作ったんだけど、見るか？】
音は、聞こえないだろう。
だけどその時私は夢中で
【うん！】
と打ち込み、手汗をかきながら兄の返事を待った。
ドユンの、デビュー曲。
長らく離れていたアイドルという界隈の身近な話。
兄は、私に知らせていいものかと悩んでいたのかもしれない。
もしかしたら、フラッシュバックしてしまうのでは、なんて考えていたのかも。
程なくして、ひとつの動画が表示された。
8人いる練習生の中に、ドユンがいた。
肩まで伸びた髪を赤色に染めて、ドユンはキラキラと輝いていた。
動画を最後まで見終わらないうちに、漠然と胸に浮かんだことがある。
たったひとつの、揺るがない私の気持ち。
私は、
“踊りたい”
その一心で、3ヶ月ほど使っていなかった練習着を引っ張り出す。
階段を駆け降りる私に、母が何事かとこちらを眺めていた。
“ちょっと公園まで散歩してくる。”
そう言い残して、転校祝いのスニーカーを履いて走り出した。
結果として分かったことがある。
私は、夢を諦めきれてなんかなかった。
ドユンの動画ひとつ見ただけで、一年とちょっとのいろんな光景が蘇って。
苦しいことばかりだったけど、無性に恋しくなって。
seventeenの姿が思い出されて。
こんなに踊りたくて、歌いたくてたまらなくなるなんて、私、アイドルになるために生まれてきたのかもしれない。
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千笑 - お待たせいたしました。更新を再開させていただきます。 (2023年1月9日 13時) (
レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
千笑 - いつも小説を楽しんでいただいてる皆様へ。作者の千笑です。私情により、ログインすることができなくなってしまったため、長期間更新ができないかもしれません。申し訳ありません。状況が改善した時にまたお伝えします。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
Kokuma(プロフ) - めちゃめちゃ好みです！続きが楽しみです。 (2022年12月17日 21時) (レス) id: 9eeff62ceb (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - まさかの展開すぎてびっくりしてます。続き気になります！更新頑張ってください！ (2022年12月7日 23時) (レス) @page38 id: e86bc2c528 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 前々から読ませていただいているのですが、読んでてすごく引き込まれるし、読むたびに続きが気になってしょうがなかなってしまいます！！むちゃむちゃ好きです！！いつも更新ありがとうございます‥！！ (2022年12月7日 0時) (レス) id: 6864ce5b3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千笑 | 作成日時：2022年10月31日 10時
