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そんな調子で、キムミンギュは私の耳を気にせずマシンガンおじさんトークを続けた。
“ミンギュせんぱ、”
言いかけて、そういえば私はもう練習生ではないんだと寂しさを覚えた。
”ミンギュオッパ。早いです、携帯が認識してません”
先程まで親戚のおじさん以外の何者でもなかったミンギュ先輩、もといミンギュオッパが、きょとんと口の動きを止める。
【あー、忘れてた。耳の調子はどう?】
この人は、どうしてこんなになんともないことのように聞いてくるんだろう。
“痛くはないので大丈夫です。”
そう返しておいて、自分でもどこが大丈夫なんだよと笑えてくる。
ボロボロのくせに。諦めきれていないくせに。
【健康に、しっかり食べて育つんだぞエギや。】
そんな言葉と、万ウォン札を数枚残してミンギュオッパが去っていった。
いつ来ても明るいなあ。
音なんて一つも聞こえないのに、やけに明るく騒がしい。
釜山では、なんてこともない生活を送った。
いまだに、アイドルや歌手の映像を見ることはできない。
カウンセラーの先生に言われた通り、ちゃんと日付を超える前に寝て、学校で授業を受けて、3食食べる。
中学生の頃は当たり前にしていたことを、今してみると何故か難しかった。
毎日ベッドに入っても眠れず、夜中に何度も起きてしまう。
一度狂ってしまった体内時計を元に戻すのは少し時間がかかりそうだった。
兄は、少しだけ頻繁に釜山へ帰ってくるようになった。
このご時世だから休暇が多い、と言って帰ってくるのだが、心配してくれているのは誰の目から見ても明らかで。
2日ほど泊まったり、1,2時間で帰って行ったり。
帰ってきて特別なことをするわけでもないけど、家族4人で食卓を囲むのが楽しかった。
7月に入り、釜山にも暑い暑い夏がやってきた。
いつもは聞こえる蝉の鳴き声が聞こえない夏は、別世界のように静かだ。
夏休みを控え、今は1年ちょっとぶりに同じクラスになったハナと一緒に手話を習っている。
別に私が話せないわけではないし、コミュニケーションは携帯を使えば何の問題もない。
ただ、何もしないのが怖いだけ。
あまりに一生懸命に走り続けてきたからか、いきなり立ち止まるのが怖くなる。
『こんにちは、私はジウンです。高校生です。』
『すごい!』
カウンセリングをしてくれる先生が、心因性の難聴を専門分野としており手話ができるとのことで、たまにこうして教えてくれる。
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千笑 - お待たせいたしました。更新を再開させていただきます。 (2023年1月9日 13時) (レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
千笑 - いつも小説を楽しんでいただいてる皆様へ。作者の千笑です。私情により、ログインすることができなくなってしまったため、長期間更新ができないかもしれません。申し訳ありません。状況が改善した時にまたお伝えします。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
Kokuma(プロフ) - めちゃめちゃ好みです!続きが楽しみです。 (2022年12月17日 21時) (レス) id: 9eeff62ceb (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - まさかの展開すぎてびっくりしてます。続き気になります!更新頑張ってください! (2022年12月7日 23時) (レス) @page38 id: e86bc2c528 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 前々から読ませていただいているのですが、読んでてすごく引き込まれるし、読むたびに続きが気になってしょうがなかなってしまいます!!むちゃむちゃ好きです!!いつも更新ありがとうございます‥!! (2022年12月7日 0時) (レス) id: 6864ce5b3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千笑 | 作成日時:2022年10月31日 10時