45 ページ46
あっち側へ戻る。
そう宣言した私に、だったら本格的に耳(心)を治さなければと両親がソウルの名医に連絡を取ってくれたそうだ。
初診ということもあり訳のわからない人形並べやらなんやらをさせられたけれど。
今日はソウルに泊まり、明日帰る予定で少し時間が空くため、兄に会いに楽屋へやってきた。
授賞式なので、待機時間も長いのだ。
両親は曲に合わせ、前髪をかきあげカッコよくなった息子に夢中だ。
一方、seventeenに揉まれに揉まれた私は最終的に安全圏、女子力コンビの元に駆け込んだということである。
結局お説教中だけど。
音が聞こえなくても、確実に騒がしい楽屋。
なんとか抜け出し、スタッフさんが慌ただしく駆け回っている横を行くあてもなく歩く。
少し歩いたところで歌手らしき人をちらほらと見かけるようになり、空気の揺れで大きな音が鳴っていると分かり不安になる。
あれ、こっちって来ていいのかな。
一応関係者パスをいただいたものの、どこまで行っていいのかは分からない。
アーティストでも、もはや練習生でもない一般人なのに、ステージのほうに行っていいのか？
やっぱ戻ろう。
そう思い直して振り向いた時だった。
急に誰かに後ろから腕を引っ張られ、バランスを崩してぶつかってしまった。
“あ、すみません”
アイドルだったらまずい。
そんな考えでとっさに距離をとる。
服装から見るに、ほんとにアイドルのようだ。
目線の先でキラキラと輝く衣装が眩しい。
俯いた私に何かを話かけているのだろうが、目の前の人は一向に退こうとしない。
“あの、私耳が､､､”
そう言いかけたところで、両肩をがっしり掴まれた。
驚いて顔を上げてから気づく。
“ひさしぶり”
マスクを外して、ゆっくりと動く唇。
ドユンだった。
前に会った時よりも背が伸びていて、目線の位置がだいぶ高くなっている。
その上ヘアメイクをして、まさにアイドルらしい格好をしていた。
半年ぶりの再会に、戸惑いと嬉しさが溢れる。
“久しぶり。元気にしてた？”
そう問いかけると、ドユンは焦ったようにポケットから携帯を取り出そうとする。
見た目がだいぶ変わっても、その仕草がなにひとつ変わっていなくて笑みが溢れた。
【元気だった。ジウンは？耳は大丈夫？】
“うん、全然痛くないし、大丈夫。”
そう返すと、ほっとしたようにドユンの顔が綻ぶ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 733人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「SEVENTEEN」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千笑 - お待たせいたしました。更新を再開させていただきます。 (2023年1月9日 13時) (
レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
千笑 - いつも小説を楽しんでいただいてる皆様へ。作者の千笑です。私情により、ログインすることができなくなってしまったため、長期間更新ができないかもしれません。申し訳ありません。状況が改善した時にまたお伝えします。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
Kokuma(プロフ) - めちゃめちゃ好みです！続きが楽しみです。 (2022年12月17日 21時) (レス) id: 9eeff62ceb (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - まさかの展開すぎてびっくりしてます。続き気になります！更新頑張ってください！ (2022年12月7日 23時) (レス) @page38 id: e86bc2c528 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 前々から読ませていただいているのですが、読んでてすごく引き込まれるし、読むたびに続きが気になってしょうがなかなってしまいます！！むちゃむちゃ好きです！！いつも更新ありがとうございます‥！！ (2022年12月7日 0時) (レス) id: 6864ce5b3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：千笑 | 作成日時：2022年10月31日 10時
