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岩「……とりあえず、早く帰ろう。まだ何があるかも分からない。長く此処に留まるのは危険だ。」
その岩本さんの一言で、はっと我に返った。
松村くんが、人を殺すような人達と行動を共にしていたという事実。
そして、私に備わっていたという"神通力"
頭の中を整理しきれない。けれど周りにいた皆が、私の顔を心配そうな顔で覗き込んでいるのに気づいて
『大丈夫です、行きましょう。』
そう、答えた。
✱
日が傾いて辺りが赤く染る頃遊園地を出て、帰りの電車に乗るしばしの間。
言葉数は少なく、空気はズシッと重い感覚がした。
皆色々私に聞きたいことも沢山あるんだろうけど、気を使って敢えて聞かないでいてくれてるのかもしれない。
でもそんな時間に耐えきれなくなったのか、蓮くんが声を出す。
目「Aちゃんの力…"神通力"、か。
今までの襲撃の原因がそれなら、やっぱりその能力の正体をしっかり調べた方がいいのかな。」
阿「…うん、明日からまた休日でよかったね。
この状態で大学へは……正直、とてもじゃないけど行かせられないな。」
『そうですよね。
それに、私も知りたいことが多すぎるんです。
一体自分が何者なのか、どんな力を持っているのか…自信がなくなってきて、分からなくて。』
宮「Aちゃん…松村くん、だっけ。
友達と思っていた人に、裏切られた形になるんだよね?
平気では…、ないよね?」
『……はい、彼の言っていたことが本当なら…信じられないし、ショックです。
親友と呼べるほどの付き合いではなかったですけど、妖が見える私の数少ない理解者だったので…。』
そう、いつも妖に出くわして疲弊して講義室にやってくる私に労いの言葉をかけてくれる。
それくらいには気遣いの出来る優しい人なんだと思っていた。
それはただ上辺での付き合いでしか無かったみたいだけれど。
そう改めて実感すると、胸の奥がギュッと掴まれる感覚がして少し切なくなった。
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作者名:fu-ma | 作成日時:2022年5月27日 11時