九者九妖 2 (ページ25)

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75 ドライアド(2) ページ25

その声に律儀に立ち止まってくれる六石会の2人に、康二くんは続けて言葉を投げかけた。

向「まずひとつな。森本って言うたか？
…あんたさっき、Aちゃんのこと"みこ"とか呼んでたよな？どういうことや？」

森「あぁ、それ？

んー、その子の神通力がどういう理屈の物かは俺らには分かんないけどさ。人間界では神の子とかそういう意味で"神子(みこ)"って呼ぶ時があるんだってさ。

なんかさ、名前読んじゃうと情が移っちゃいそうだし？」

向「ほぉ？

お前らに並の情があるなら、名前以前にこんな悪行はしないと思うんやけどな。

なんで…

なんで人間の皆にこんな酷いことするん？

確かに妖怪にとっちゃ住処を追われることも沢山あるけど…人間て、ええ人もいっぱい居るし、協力し合えば妖怪でもちゃんと共存できるんやで…？」

人間が大好きと言ってくれた、康二くんの切なげに訴える声。彼の人間を想う温かい心の温度が滲み出ている気がする。

しかし、それに対して田中…と言っていた男が応える言葉はとても冷たいものだった。

樹「はぁ…俺たちのことよく分かりもしねぇのに良くそんなこと言えるな。

俺らドライアドはな、色んな樹木の精霊から妖力を…生きる力を得てんの。

人間は原生林を伐採して切り開く、だけじゃねぇ。

自分らの都合の良く扱いやすい木ばかりを植えては切り…を繰り返した挙句、最終的には最近は大半が放置されて荒れ放題になってる。

そんな山の惨状をお前らは見てんのか？」

確かに、そういう問題はたまにテレビで特集が組まれているのを見たことがあったかもしれない。

彼らなりの主張を述べるその様子を、黙り込んだまま見つめる。