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「おきれいですね、○○社の秘書だなんて、頭が上がりませんよ」
『いえいえ、久末さんこそ、開業医のお医者様だなんて』
あれから一週間後。
失恋には新しい恋、だとかいうから、
週末の時間を使って、婚活パーティーに参加してみる。
全然つまんないし、もうこの先おひとりさまでもいいかも、なんて考えながら、
頼れる王子様もどきをあしらう方法を考えてみたり。
この人の香水、気に入らないんだよなー、
後ネクタイとシャツの色合わせが胡散臭すぎて。
考えた結果、お手洗いとか言ってフェードアウトして、
会場から去ろうとしたら。
「待ってください、」
『！？』
「何か忘れてません？僕の連絡先聞いてませんよ」
『え、』
「Aさんはおっちょこちょいなんですね」
笑われて、寒気がしたのは初めてだった。
真夏なのに、寒い。
じりじりと日に焼かれているはずなのに、
寒い、
「それとも、僕が追いかけてくるのも計算のうちでした？」
『、』
「お望み通り、行きますよ？」
もう、自分の意志では動かせない手を取られて、
足はもつれながら、前に進んでいく。
人って、
恐怖を感じると動けなくなるってこと、
...初めて知った。
私このままどうなっちゃうんだろ、
このままついていったら、
「A？」
雑踏の中、
聞こえたのは大野さんの声。
視界の端から、彼が現れる。
休日なんだろうか、
シンプルな格好をした彼が、私の捕まれてる方の手を掴んで、
「なんですかあなたは」
「何って...」
大野さんは、ちらっと私の方を見て、
「婚約者、ですけど」
にっこり笑って、そういった。
いやいやお兄さん、嘘はいけねぇよ？
とかなんとか第3の人格出てくるくらいには戸惑ったけど、
でも、そんなわけなくて。
私を助けるために、あんなふうに言ってくれただけで、
本当は、
「大丈夫？」
『すみません、助けていただいて...』
「いや、たまたま見かけただけだから」
なんもなくてよかった、って笑いかけられて、
泣きそうになる。
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作者名：あきんこ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=akinko0125
作成日時：2019年7月20日 15時
