十一戸 ページ13
芹澤「地震速報…え、揺れるかな？」
あぁ……
“近い”
いつの間にか鈴芽ちゃんも共用廊下の手すりから身を乗り出して“それ”を見ていた。
「(…この子も、見えるのか)」
住宅と雑居ビルが立ち並ぶその奥。ここから二、三百メートルほど離れた距離に、赤黒い胴体がうねっている。ビルに挟まれた空間でゆっくりとのたうつ“それ”を、おびただしい量のカラスがギャアギャアと騒いでいる。
芹澤「うわ、すげえ鳥！…あれ神田川のあたりだよな。川になんかあるのか？」
「あー…ここから離れた方がいいかも」
ぼそりと呟く私を見て、芹澤はキョトンとしていた。
そんなことをしている間に、いつの間にか鈴芽ちゃんは何かを持って走り出していた。
芹澤「え？え、おいちょっとあんた！」
芹澤が叫ぶも、気にせずにどこかへ走っていってしまった。
芹澤「行っちまった…これからどうすんだ？」
「…ごめん芹澤、私もちょっと行ってくる」
芹澤にそれを伝えると私の足が動くのはほぼ同時だった。
私は走った。次第に切れていく息なんてお構いなしに、私はミミズ出現の根源を探すためにただひたすら走った。
ミミズは上に上がっていく。それと同じ速度で私の頭には助けを乞う声や苦痛に叫ぶ声が流れ込んできて気が狂いそうだ。
不意に、周りに静寂が訪れた。鳥もセミもぴたりと泣き止んでいる。
急に静まり返った東京に不気味さを覚えながらそれでも必死に足を動かして鈴芽ちゃんを見つけた、その刹那。
ドン！
地面が大きく縦に弾んだ。私は走った疲れとその勢いの影響で、バランスを崩し地面に膝をつく。と、ポケットの中のスマホが大音量で警報を鳴らし始めた。それと同時にあちこちで人々のスマホも鳴り出し、辺りがざわつき始めた。
次の瞬間、警報は止み地震速報の表示も消えた。周囲のざわつきも次第に収まっていき、地面はもう揺れていない。
…そんなことは気にせず、私はすぐに橋に駆け寄り下を覗き込んだ。
トンネルに詰まっているかのようにブルブルと震えながら膨らんでいくミミズを見て、全身の血の気がサッと引いたのを感じた。
「……要石が、抜けた。」
いつだったか、草太の家にお邪魔した時に見た、ミミズに関しての資料。東京でミミズの頭を抑えている、二つ目の要石。
それが、抜けた。
「全身が出てくる…！」
その瞬間、膨らみは弾けトンネルからものすごい勢いでミミズの濁流があふれだし、ドン、という地響きと共にミミズの尾がトンネルから抜けた。
続く
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ユウくん(プロフ) - 面白いので更新楽しみにしています😊 (1月3日 17時) (
レス) id: e6a1570f4d (このIDを非表示/違反報告)
529zinbeizame(プロフ) - 設定が神すぎます！お忙しい中でしょうが、更新していただけるのを待ち望んでおります… (8月11日 15時) (レス) id: c26de05c7b (このIDを非表示/違反報告)
澪桜(プロフ) - かなり更新していないと見受けましたが続きが気になります！！更新、楽しみに待ってます((o(｡>ω<｡)o)) (5月11日 22時) (レス) @page11 id: 8aa45553d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まもち | 作成日時：2023年2月1日 0時
