十九話【救済方法】 ページ19
「…私を、救済しに?」
ポカンと口を開けて、呆然としている。
こくりと頷くと、目を輝かせた。
「つまり、殺してくれるって事かい!?」
『…ん?』
殺す事が…救済?
女好きなだけでは、期限無しにはならない。
期限無しの理由は、やっぱり…
ポシェットからリストを取り出して、太宰治の項目を確認する。
太文字で、一言だけ書いてあった。
『【太宰治に生きる意味を与えよ】…か』
「!矢張り彼女は天使なのだよ!国木田君!!」
「…真逆、有り得ん」
未だに認めようとしない国木田に、天使の翼を出して見せる。
目を見開いて、再度「有り得ん…」と呟いた。
却説…如何しようか。
期限の近いリストの人間は、大半を救済した。
今、太宰治を救済するのも…有りかもしれない。
よし、と一言呟き、国木田を見詰めた。
『国木田…太宰治の救済をする為、当分の間世話になる。
社長と面会させて欲しい』
「はぁ!?何を云っている!無理に決まって…」
「善いんじゃなーい?」
不意に、奥に居た糸目の、如何にも探偵の様な格好をした青年が声を出した。
「で、ですが…」と、国木田は許可するのを渋る。
…糸目の彼は、何者だろう。
「福沢さんには、僕の方から云っておくよ」
「は、はい…お願いします、乱歩さん」
案外、国木田があっさりと諦めた。
乱歩と云う奴は凄い人らしい。
「じゃあ早速私を救済しておくれ!」
『其れは無理。何をすればいいのか、分からないから』
「首を絞めてくれれば善いのだよ!さぁ!!」
『…本当に、善いの?』
ピタリと動きを止める。
善いに、決まってるじゃないか…と、小さな声で云った。
「人間には、誰にでも一度は死にたくなる事が有るのだよ。其の感情が、私は人一倍強いだけさ。
天使の君は、死にたいなんて思わないだろうけど…」
『…ふぅん。人間の感情って、難しいんだね。
じゃあ望み通り、殺してあげる』
太宰治の目は、黒く染まっている様に見える。
絶望の色なのだろうか…この世界に対する、絶望の色?
…兎に角、彼を救済する事が出来れば、其れで善い。
生きる意味を与えよ、と有ったが…殺す事が彼にとっての救済ならば、殺してしまえば善い。
国木田に許可を取る必要も無かったな…
呑気に其の様な事を考えながら、太宰治の首に手を掛けた。
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作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2018年5月7日 18時