天使失格【文スト】 (ページ16)

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十六話【拾い物】ページ16

何時もの様に、入水するつもりだった。
依頼で「天使を探して欲しい」と云われなければ。

「…何処にいるのだろうか」

こんな事なら、もっと依頼人に詳しく聞いておけば善かった。
まぁ…

「天使なんて、いる訳無いのだけれど…」

私にだって、分かっている。
天使などこの世界には存在しない、所詮作り話であるという事を。

…だけど、もし、もし…いるなら……

私に、生きる意味を教えてくれるかもしれない。

「見つからないなぁ…」

依頼人に教えて貰った天使の情報と通行人の話から、此処ら辺を通った事は分かったのだけれど…
中々見つからないものだ。

「…今日の処は帰るとするか」

元来た道を戻ろうとした時、私の目に大きなビルが映った。
何故だか、そのビルから目が離せなかった。
…今日は、此処で自、殺していこう。

大きなビルの、屋上から身を投げ出す。

そして、目をゆっくりと閉じた。

…死ねるだろうか。

こんな高さから落ちたら痛いだろう…其れは嫌だったけど、今日は何だかビルから飛び降りたい気分だったのだよ。

耳に入ってくるのは風の音で、他には何も聞こえない。

あぁ…やっと、やっと死ねる……

トンっと何かに触れた。
…何だろう。

そして、数秒後に私の躯を浮遊感が襲った。
腕を引かれ、思わず目を開けて見詰める。

其の儘優しく地面に下ろされた。
…あぁ、また死ねなかった。

其れよりも…

私の異能力、【人間失格】が効かないなんて…
それに、この容姿はまるで……

堪らず、口を開いた。

「…君は…一体……」

「何者なんだい？｣と声を掛けようとしたら、彼女の躯がぐらりと揺れた。

そして、翼が消えて落下してくる。

「…っと、」

…凄く、軽い。

私が触れても消えない翼

消えそうな白い肌

プラチナブロンドの髪に、ヴァイオレットの瞳…

若しかして、彼女は…

自分の口角が、僅かに上がるのを感じた。

携帯電話を取り出して、発信釦を押す。

「…あ、国木田君?」

「あのね、私…」

「天使を、拾ったのだよ」