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十一話【馬鹿は誰】 ページ11

『三十二人目救済…と』



三十二人目は、路地裏で殺されかけている男の人を助ける事だった。

大通りに逃げていたし…もう大丈夫だろう


楽そうで、期限が近い人の救済ばかりを行っていたら、何時の間にか三十二人も救済していたらしい。

天使としての生活に、既に慣れてしまっている自分が怖い。



『こんなにも人間って適応能力が高かったのか…』



あ、今は人間じゃなくて天使だった。

自分で自分に突っ込みを入れながら、溜息をついた。
どうやら、一人で居る事に慣れすぎて独り言が多くなってしまったらしい…治そう。

辺りも暗くなってきたし、そろそろホテルに帰るか…


そう思い、路地裏から出ようとした。
其の時、小さくだが、女性の悲鳴声がした。



『…此の、奥だ』



助けに行く為に、走り出そうとした。



《行く必要は無いだろ》


『…?』


《其奴、リスト外の人間だからな》


『は?』



…あぁ、そうだ。
天使の掟にも、リスト外の人間の救済は禁止だと書かれていた。

だけど…



『同じ人間として、見過ごせる訳が…!《同じ人間?》』


《…お前は、もう人間じゃないだろう?》


『ッ!!』

『…喩え今は人間じゃなくても、元人間だ…!』


《おい!》



ウリエルの制止の声をなんて、聞こえない。

其の儘無視して、声のした方に向かって走った。


暫く走ると、横たわる女性が居た。
周りには男が三人居る。



「…ぅ」



気絶しているだけみたいだ…まだ間に合う。

男達は彼女にはもう手を出さず、財布等を漁っている。
こっそりと警察に通報し、来るまで男等を見張ろうとした。



「…で、此奴どうする?此の儘放置でいいんじゃねぇか?」


「…否、顔を見られたからには殺すしか無い」


『…』



却説、どうするか…
残念ながら、良い案が思い浮かばない。

…仕方が無い


拳銃を構えた男等の前に、堂々と出て行く。



「!誰だ、貴様!」


『…No.1637?』



そう云えば、私には名前が無いんだった…後で考えよう。

無事に帰れれば、だけれど。


拳銃が私に向けられる。
未来予知をして、弾を避ける。

そして、身を翻して逃げた。



「ッ此奴…異能力者か!?」


「兎に角追うぞ!」


『…馬鹿』



相手は、天使なのに。




《…馬鹿はどっちだ
此奴はーーーーー》



走るのに夢中だった私は、ウリエルの言葉なんて全く耳に入っていなかった。

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作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2018年5月7日 18時

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