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Aの形の良い眉が、驚いたように少しだけ上げられた。
「珍しいね。…試合後は比較的早寝なのに」
「それはごめんって。そんな皮肉めいた感じで言わないでよ。今日は記念日だし。」
「そんなもん？ じゃあ、とりあえずコーヒー作る」
不思議そうな表情を浮かべながらも、Aの声色には嬉しさが見え隠れしている。それを汲み取った結弦は満足気に立ち上がった。
Aはそんな結弦にもう一度首を傾げてみるが、結弦 は何食わぬ顔で、食器を洗うべくスポンジに泡を含ませている。
Aは諦めて、カップを手に取った。
今日のコーヒーは深煎りである。湯がカップを満たして行くに伴って、部屋を高い香りが包みだした。
「おまたせー」
Aがリビングにそれを運ぶと、ソファに腰掛けて待っていた結弦が嬉しそうに柔らかく笑った。ぽんぽんとソファを叩いて、早く隣に座るように促す。
ぱふっと音をたてて、Aは子供のようにソファに身を投げ出した。2つの肩が触れ合う。
「おちゃめだね。」
「そう？」
「うん。こういうの彼氏の特権だよね。」
そう呟いた結弦は、不意にAの肩を寄せ柔らかな唇にキスを落した。唐突なそれにAは目を丸くして、カップから立ち上る湯気を見つめたまま固まる。
「ふは、ごめん」
謝りながら照れたような素振りをして俯いた後、結弦はAに見つからぬようにほくそ笑む。温かなオレンジ色の照明の元で見開かれた無垢な瞳と、垂れた前髪の下で悪い笑みを浮かべた切れ長の目。
突如訪れた静寂に雨音がさっきよりも大きく響く。
思いの外長く続いた沈黙の中、Aが驚きと恥ずかしさの入り交じった表情をゆっくりと結弦に向ければ、結弦は何もなかったように所得顔を収め、優しく微笑んでみせた。
「…不意打ちにも程があるよ」
「それはありがとうございます」
「何それ」
くすりと笑いを零すAの横で結弦はカップを口につけた。いつもの味がゆっくりと染み渡る。もう1口すすって結弦はカップをローテーブルに戻した。
「A、ちょっと待ってて」
「ん？」
「いいから」
Aが聞き返す間もなく結弦はリビングを出ていった。残されたAは彼が自分に何かをしようとしていることは何となくわかっても、それが何なのかは全くもって見当がつかない。
結弦が戻ってくるのにそう時間はかからなかった。ガチャリと扉の開く音に振り返ったAは、えっ、と小さく声を上げた。
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suzuran(プロフ) - 心菜さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！ もうそろそろ現地入りでしょうか？ いよいよシーズンが本格的に始まるんですね。毎日そわそわしてます。フリーが取り上げられがちですけれどショートも神プロに違いない！ (2018年9月20日 8時) (
レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - とっても優しくて、素敵なお話をありがとうございます。オータムオータム前のドキドキが癒されましたー(´ヮ`) いよいよですもんね。 (2018年9月19日 15時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
suzuran(プロフ) - 鹿さん» 公開しようか迷っていたので、綺麗な文章だなんてとても嬉しいです！ありがとうございます。もう少しドキドキ感があったら良かったかなとも思ったのですが、こういう世界観もアリということでｗ (2018年9月18日 21時) (レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 何気なくポチっと読んでいて、誰の作品かなーと思ったらsuzuranさんでしたか＾＾ なんだかすごくきれいな文章というか…。久々の癒しをありがとうございます！ (2018年9月18日 16時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：suzuran | 作成日時：2018年9月18日 0時
