ぬくもりにつつまれて (ページ39)

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⑦ ページ39

岩本side

”…俺、間違えたな”

そう思った。

向「…あかん、、冷やしましょう？」

Aさんは翔太から少し距離をとって心配そうに見つめている。
翔太はというと、ずっと泣きもせず、じいっと味噌汁がこぼれたトレーを見つめていた。

翔太「…ゃ、」

向「ん？なあに？」

翔太「近いのやだ！！」

センシティブな会話が引きずったのだろう。たぶんいつもよりナーバスになっていた翔太に対して、配膳を続行する判断をした。

今朝できたし、割と落ち着いて話してくれていたからいけるかと思ったけど、俺もどこかで知らず知らずのうちに焦っていたのかもしれない。

小さい頃はまだしも、ここ最近の翔太には珍しい、突発的に反抗した瞬間だった。

岩「近いの嫌だったか、」

翔太「ん、やだった、今日の朝も、ほんとは、、やだったのに、」

岩「そっかそっか、無理させたな、ごめんな。」

翔太「ん、、」

でも…

このまま終わっては、翔太は次からAちゃんに顔を合わせづらくなってしまう。それだけは避けたい。人間不信や不安症が悪化してしまう。

だから…

岩「翔太。ごめんなさいだけしよう。」

翔太「…や、むり、」

岩「翔太はさ、大人に謝る癖があるでしょ？でも俺、なんて言ってたっけ？」

翔太「…悪いこと、してないなら、ごめんなさい、しなくていいよ、って、」

岩「そうだね。でも今回はごめんなさい必要だよな？ごめんなさい、一緒に言おうか？せーの、」

翔太「…ごめん、、なさ、い、」

岩「よし、頑張った。もういいよ。」

翔太をぎゅっと抱きしめてやる。

無理させて申し訳ないって気持ちと、辛いけど俺の声に耳を懸命に傾けてくれてありがとうって気持ちと。

とりあえず今日はこれ以上刺激を与えないほうがいいかな。

岩「康二、申し訳ないけど、ちょっとトレー見えないところに下げてもらえる？あと、Aちゃん俺からもごめん。」

A「いいえ、大丈夫ですからね」

穏やかにそう言ったAちゃんは俺の腕の中でしくしくと静かに泣いてしまっている翔太を見る。

A「…私、部屋出ます。」

岩「ん。ありがとう…助かる。」

康二とAちゃんが出て行ってから、
堰を切るようにわっと泣きだした翔太を、俺は黙ってずっと抱きしめていた。