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Aside
とりあえずドアのところからは動かず、翔太くんの様子を見る。
宮「Aちゃんだよ？」
翔太「…」
その手はたぶん無意識に布団をぎゅっと握りしめていて、彼の緊張や不安が伝わってきた。
微笑んで小さく会釈してみたけど、ちょっと固まってしまっている。
宮「…翔太？」
翔太「え、やだ…」
宮「何が嫌？」
翔太「知らない人、、」
そう言って完全にこちらに背を向けてしまった。
厳密には先日のフラッシュバックの件で会ってるんだけど、その時の翔太くんはパニックになっていて私の顔は一切見てないだろうし。
"助けてくれた”と認識してくれたとはいえ、私のことも怖かったことに変わりはない。
育った環境の影響で、初対面の大人を一発で信用することはできない翔太くんにとって、仕方ないことだ。
岩「…ねえ阿部。この前翔太のことを助けてくれた人だよ、って言ってみる？」
阿「えー、どっちがいいんだろう。でもフラッシュバックのことまで思い出してしまう可能性もあるよね」
岩「そうなんだよ…」
私の背後で２人がこそこそと話し合っている。
そうこうしている間にも、翔太くんは完全に怖がってしまっていて。
パニックになったり泣いたりしていないけれど、今日のところは限界かな。
宮「わかった。じゃあ最後にAちゃんにばいばーいってしてあげて？」
翔太「…」
手を振る私をちらっと見た翔太くん。
黙ったまま１回だけ手を振ってくれた。
…というよりは、ひらっと力なく手を動かしてくれた、という表現のほうが当てはまる気がする。
それにすっごい不安そうな表情だったのがなんだか申し訳ない気分になる。
…でも、人に慣れてほしいんだ。ごめんね。
宮「よかった、新しいお友達になれそうだね」
翔太「んー」
宮「また来てもらおうか！」
翔太「んー」
ＹesでもＮoでもない微妙な反応を返した翔太くんが、その日もう一度こちらを見ることはなく、私は結局そのまま病室を出て。
次の日も、そしてその次の日も回診や配膳時に1日1回は顔を出してみたけれど、いまいち進展はないまま時間だけが過ぎていった。
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作者名：シルク | 作成日時：2023年9月23日 22時
