ぬくもりにつつまれて (ページ23)

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③ ページ23

阿部side

夜の見回り。ぐずついていた子がやっと寝てくれて、次は翔太の部屋。
翔太は体調が落ち着いていれば、割と寝つきはいい方。

でも。

阿「あらら、翔太眠れなかった？」

扉を開けると、かすかに聞こえる泣き声。

入院し始めて１か月くらいはほぼ毎日夜泣きしちゃって、そこから、1か月、半年、1年、と時が経つにつれて、夜泣きすることはほぼなくなったんだけどね。

精神的に不安定になってしまう夜が今でもたまーにある。

阿「どうしたの～不安になっちゃった？」

翔太「んー、、だっこ」

抱き上げて、さりげなく熱がないか確認。体調不良ではなさそうだね。
虐待のフラッシュバックとかでもなさそうで一安心。

フラッシュバックによるパニックは、もうほとんど消えたけど
何がトリガーになるかわからないから、割と気をつけている。

例えば、初めて会うスタッフとか、面会で来る人とか、テレビの映像とかね。

翔太「なんか今日ねむくないの」

阿「そっか(笑)まあそういう日もあるよね」

でも寝てもらわないとだから、このまま抱っこして寝落ちを待つしかないかな。
ゆら、ゆらと一定のリズムで揺れながら、優しく背中をとんとんしてあげる。

翔太「あのね、おほしさま見たい」

阿「え？お星様？」

翔太「今日ね、ラウがおほしさまの本もってきてくれた」

阿「そうなの？よかったねえ」

翔太「おほしさま見たら寝るからお願い。」

キュルキュルの目で見つめてくる。
佐久間ー、”あざとい”ってこういうことなのかな？(笑)

別に断る理由もないから、窓辺まで歩いて行ってカーテンを開ける。

翔太「きれい！」

阿「本当だね。あ、あれくじら座っていうんだよ」

翔太「えっ！わかるの？しゅごーい！他には？」

阿「んーとね、あそこに４つあるでしょ？あれは秋の大四角形」

翔太「しゅごーい！！！」

いけね。寝かせないとなのに興奮させちゃったよ(笑)

翔太「ねえ、阿部ちゃん。のど乾いた」

…絶対俺が叫ばせたからだよね(笑)

阿「ちょっと待っててね、お水もってくる」

翔太「しょうたもいく」

人見知りで、人を怖がることの多い翔太が、自分からナースステーションに行きたいと言ったのは、すごいこと。
こういうことは珍しいから内心ちょっとびっくりした。

阿「いいね、一緒に行こっか」

抱っこしたまま、ナースステーションへと向かう。