�� ページ20
深澤side
翌日。翔太のサチュレーションも正常になってきて、心電図も安定してきた。
そろそろ目を覚ます頃だろうってことで、抜管を目を覚ます前に終わらせてあげようと翔太の部屋に向かう。
扉を開けると、翔太を見てくれていた康二が、モニターを確認しているところだった。
深「おつかれ。安定してる？」
向「はい、後は目覚ましてくれたらいいんですけど…」
深「今から抜管するわ。起きたとき苦しいのかわいそうだからさ。」
向「そうですね…って、、しょったくん？」
パッとベッドを見ると、翔太の目がゆっくりと開いたところだった。
その目が俺らを捉えると同時に、挿管されていることに気づいたのか、苦しそうに顔をゆがめる。
深「おおっ、起きたか〜。すぐに苦しいのとっちゃおうな」
過去にも挿管したことのある翔太は、抜管の苦しさを知ってる。
何をされるのか察し、開いたばかりの目にあっという間に涙がたまってしまった。
…ああ、泣かせたくなかったんだけどな。
向「ちょっとがんばろな」
深「はい、抜きまーす」
吸引を済ませ、慎重に、でも手早く抜管していく。
深「最後ここ苦しいよー」
翔太「んんっ、ごほっ、ごほっ、」
深「はぁい、よく頑張りましたー」
翔太「ごほっ、おえっ」
向「おっと、」
全部チューブが抜けた直後、少量だけどえづいて嘔吐した翔太。
康二がとっさに顔を横に向けてくれたから、詰まらせないで済んだ。
深「ありがと康二。…よし、まだ呼吸苦しいと思うからこれつけとこうね」
翔太「んん、、」
嫌がって酸素マスクに伸びる手を戻し、握ってやった。
医者として、患者さんの意識が回復するのを待つという経験は何度もある。
どの子どもも平等だけど…やっぱりこいつの時は特に不安になる自分がいて。
…だから、目が覚めてくれて本当によかった。
深「おはよ？」
翔太「…は、よ」
挿管の影響でまだかっすかすだけど、またその声が聞けて、心の底から喜びがわきあがる。
深「よーく頑張ったぁ。えらいよ、翔太」
向「ふっか先生、お顔ゆるゆるですよ」
深「しょーた、かあいーなと思って」
向「そりゃあしょったくんはいつだって可愛いですけど。今日はどうしたんですか」
深「うるせーな。いいだろたまには」
康二と俺のやりとりを見ていた翔太は、酸素マスクの下でにこっと笑って目を閉じた。
fin
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作者名：シルク | 作成日時：2023年9月23日 22時
