過去編 ページ33
わたしを拾ってくれた主人にはわたしと同い年の息子がいた
名をアリーといった
主人に似て優しく、穏やかな人だった
そんなある日
その街の子供達で怖い話をしていた
あの森の奥にはこわーい魔物がいるとか
夜中まで起きているとお化けが出てくるとか
そんななか主人の息子がちょっと違う怖い話をした
殺人鬼の話だ
となりのとなりのさらにとなりの遠くの街である1人の男が殺されたんだとか
日常的に娘に暴力を振るっていた男は娘の失踪と共に遺体で発見されたそうな。
その娘が殺したと思われるが、未だにその娘がどこにいるかはわからない
この地域には古くからの言い伝えがある
一度人を殺したものはもう殺人をやめられなくなる
そんな言い伝え。
「いまだにその娘は様々な街で殺人を繰り返しているのかもね…」
ニコニコしながらいう彼にゾッとした
それはあまりにわたしのこととかぶっていた
「どうしたの、ソフィア。顔色悪いよ?」
今思えば単に心配してくれてただけだと思う
でもそのときの私にはどうしても、お前の話だって言われている気がしてならなかった
あぁやっと
アリーを殺す理由ができた
本当なのかもしれない
人を殺したものは一生殺し続けるって
少なくともわたしはそのひとりになるのかもしれない
アリーが好きだった
優しくて、かっこよくて
よそ者の私を汚れた私を
心が凍ったままだった私を溶かしてくれたのは
主人とアリーだった
初めての恋心に戸惑ったものだ。
そんなものは本の世界だけだと思っていた
私には一生関係ないと
だから戸惑ったのだ
恋心と共に芽生える殺意に
殺したい
殺したい
憎いから殺したいんじゃない
好きだから殺したい
だめってわかってた
だから抑え込んでた
でももういいの
私が殺さなきゃ殺されるかもしれない
だから殺すの
さよなら、アリー
『好きだよ』
わたしは狂気に満ちている
だれかを好きになってはいけない
だれかを好きになってしまったら
またあのどす黒い感情が溢れてきてしまう
蓋をしよう
この思いに
この感情に
私は殺意に勝てないのだから
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こなつ(プロフ) - すっごく面白かったです…!!幸せな気持ちにさせてくれてありがとうございました!! (2022年8月6日 21時) (レス) @page40 id: 0e265eac7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴 | 作成日時:2019年7月25日 14時