鈴音 (ページ3)

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気象的にはもう夏であるとしても異常だと思うくらい日差しが強い。下手すれば熱中症になるだろう。

暫く歩いて人の声やボールを打つ音が聞こえてきた。
俯き気味だった顔を上げるとテニスコートが見えてくる。あの中に、テニス部からの実行委員がいるのだろう。

さて、誰に話しかけようかと思いながら足を進めていると見覚えのある姿が見えた。
クラスの中で誰よりも目立つ髪色をしているその彼はサボっているのか木陰から練習を眺めていた。

「仁王くん」
「……ん？おまんは確か……」
「同じクラスのAです」
「おお、そうじゃったのう。で、ここでなにしとるん」
「先生に頼まれてテニス部にいる実行委員に用があるの」
「柳生か？」
「うん。あと柳くんと真田くん」
「……ここで待っときんしゃい」

仁王くんはそう言うと地面に手をついて立ち上がると、ふらふらとした足取りでテニスコートの方へと歩いて行った。
あ、サボりとかじゃなかったんだなと彼の様子を見て疑ったことを反省しているとテニスコートの中心の方にいる人たちに声をかけるのが遠目からでも見えた。

何か少し会話をしたようで4人になってこちらへと歩いてくる。結構目立つ学校でもユニフォームの人たちが近づいてくるのは少し緊張する。

「呼んできた」

そう言うと仁王くんはまた地面に座って首にかけていたタオルを頭から被って俯いた。
そんな彼にお礼を述べてから仁王くんについて来た3人を見上げる。なんだろう、すごく圧がある。

「ええっと、確かB組実行委員のAさん、でしたか？」
「うん。AAです。よろしく」
「俺たちに用があると仁王から聞いたがどうかしたのか？」

柳くんの質問に答えるように手に持っていた合宿のしおりをそれぞれに渡した。
1番に渡された真田くんが「合宿のしおりか」と口にする。

「先生に頼まれて持ってきた」
「そうだったか。悪いな、ここまで来てもらってしまった」
「いえ、別に。ずっと作業してて疲れてたから気分転換にもなったし」
「それにしても素晴らしい表紙絵ですね。美術部の東さんが描かれたのですね」
「E組実行委員の彼女か。確かに素晴らしいな」

表紙をまじまじと見つめて感想を言葉にする彼らに直接言ってあげればモチベーション上がるだろうに、と思う。
まあ、この場にいないから仕方ないのか。