夜の皇帝となれ ３

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「虎杖」


東京校のスタート地点へ向かう虎杖を伏黒が呼び止めた。


「大丈夫か？」


「おーっ、なんか大役っぽいけどなんとかなんべ」


「そうじゃねぇ。何かあったろ」


「あ？なんもねーよっ」


虎杖は笑って誤魔化そうとしたが、伏黒の真っ直ぐな目に射抜かれ頬を掻いた。


「……あった」


頭をよぎるのは、傷だらけで顔をぐしゃぐしゃに濡らした吉野順平の顔。助けられなかった、目の前で散った命。


母親思いで、映画が好きで、会ったばかりなのに虎杖とは話の合う友人になれた。その母親が宿儺の指に誘われて現れた呪霊に殺されてしまうまでは。


「けど大丈夫なのは本当だよ。むしろそのおかげで誰にも負けたくねーんだわ」


「……ならいい。俺も割と負けたくない」


「割とぉ？ウチ的には絶対の間違いやと思うけど？」


「そーそー。何が割とよ一度ぶっ転がされてんのよ！？圧勝！！コテンパンにしてやんのよ！！真希さんのためにも！！」


「……そーいうのやめろ」


「明太子！！」


「そう！！真希のためにもな！！」


皆、負けたくない気持ちは同じらしい。真希のためにも勝ちたいという思いも本人を除いて同じだ。


京都校の実力の高さは知っている。だからといって怖じ気づいてやるつもりは一切ない。これはお遊びではなく、歴とした戦いなのだから。


「へへっ そんじゃまぁ、勝つぞ」


そう言ってニッと笑った虎杖を


「何 仕切ってんだよ」


真希が蹴飛ばした。

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