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一応話を聞いてみるに、一番乗りは本当に珍しいことにAだったらしい。広いキャンバスがあるじゃないかと黒板アートを始めたとのこと。
我を忘れて描いていたのをたまたま担任が通りかかって目撃し、ニヤニヤしながら観賞。それに気づいたAが担任に悪態をつきつつ黒板アート続行、そこに三ツ谷が来た……という流れだそうだ。
「それで先生がいるのか」
「まぁそういうこった。あとピアス取れ」
「ハハ、オレのアイデンティティーなんで見逃してください」
「先生そんなやと彼女ができませんよ?」
「よーしオマエら後で生徒指導な」
黒い笑みを浮かべる担任に軽〜く謝っておいた。取っ付きやすい担任だが腐っても教師なのであまり逆らわないのが得策である。
三ツ谷は自分の机に鞄を置き、中身を机の中にしまっていく。その際にカサッ、と手に固い袋が当たった。確認するまでもなくそれはクッキーの袋で、Aにお裾分けしようと持ってきていた分もしっかりとそこにある。
渡すなら今だが、生憎この場には担任もいる。校則違反に関しては今更なので良いとして、今渡せば茶化される未来しか見えない。……さて、どうしようか。
「先生」
「お?」
「今から校則違反するんで目ぇ瞑ってもらっていいっスか?」
「潔く宣言すんなし」
「まあ良いじゃないですか。受験で忙しい中3に青春させてくださいよ」
「そうですよ先生、若人から青春を取り上げるなんて許されてないんですよ。何人たりともね」
「どっかで聞いたネタやめろやオマエぇ……。わかりましたぁ、先生は1人寂しく廊下に出ときますぅ」
口を尖らせながらではあるが担任は教室を出てくれた。これで茶化されることはない。その代わりAと2人っきりにはなるが、その方が都合がいいというものだ。
2つの袋のうち1つを鞄から取り出し、彼女のチョークを払ったばかりの手に乗せる。彼女の顔がパアッと明るくなったのがわかった。
「昨日の晩作ったからお裾分け、な」
「良いの!?やった、ありがとね」
「どーいたしまして」
自分は結構この笑顔に弱いのかもしれない。
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匿名希望:我妻さん - 書き疲れたのでここから先は一ちゃん視点をご覧くださいませ (2021年12月1日 19時) (レス) id: 3afba90bb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名希望:我妻さん | 作成日時:2021年9月17日 21時