検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:80,447 hit

ページ42

Aの前まで来ると、少しだけ屈んで彼女と目線を合わせた。やはり少し怯えているようで、三ツ谷は安心させるように微笑みかける。そのままゆっくりと慣れた手つきで彼女の頭を撫でる。


溜め込んでいたものが出てしまったのだろう。Aは堤防をなくした川のように涙を流し始めた。こんなときなのに、弱いところさえ愛おしいだなんて。


「……怖がらせたか?」


「……うん、少し……怖かった」


「そっか。ごめんな、オレがもう少し落ち着けば良かったよな」


「三ツ谷君は、悪くないよ。助けてくれただけやん」


それはそうかもしれないが、八つ当たりも込めた手荒な方法を使ってしまったことにかわりはない。もとはと言えば、あれだけ人が多いなかAの様子を気にしてやれなかったのが悪いわけだし。


……何故、初めからすがってくれなかったのだろう。東卍メンバーがいたからとか迷惑をかけたくなかったとか、彼女なりに考えることはあったのかもしれないけれど。もし後者ならそんなこと気にしなくて良かったのに。


好きなのだから、好きな女に頼られたいと思ってしまうのは当然なのだから。今まで散々振り回しておきながら今更自分以外の人間にすがられる方がずっと嫌だ。


彼女が気まずそうに目をそむけた。自分の代わりに彼女がすがろうとしたのがさっきの高校生なら……どうも気にくわない。だって不安になるだろう?


「……オレじゃダメだった?」


「え…………?」


Aを撫でていた手が止まる。


「見ず知らずの男なんかにすがるってことは、オレじゃダメだったってことなんだろ……?」


「そんなわけ……!だって、」


そこで彼女はハッとしたらしく、その先を紡ぐことはなかった。だって__だって、何なんだ。そんなわけないと否定してくれたことは嬉しいけれど、そこで止められたら気になって仕方がないじゃないか。


また俯いてしまったAの頭から手を退け、屈みっぱなしで痛くなった腰を上げた。

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (114 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
431人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

匿名希望:我妻さん(プロフ) - runaさん» ありがとうございます! (2021年8月26日 13時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
runa - お忙しい中三ツ谷君視点も書いていただきありがとうございます。とっても美味しいです(???) (2021年8月26日 11時) (レス) id: 318f1a5b3c (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 宿題がっ…………済まない………だと……?数日間更新しないかもしれません (2021年8月23日 19時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - インパルスって描くの大変すぎません?難しいんですけど…… (2021年8月11日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 彼が語る、幸せな世界線の物語。 (2021年8月8日 2時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:匿名希望:我妻さん x他1人 | 作成日時:2021年8月8日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。