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Aの前まで来ると、少しだけ屈んで彼女と目線を合わせた。やはり少し怯えているようで、三ツ谷は安心させるように微笑みかける。そのままゆっくりと慣れた手つきで彼女の頭を撫でる。
溜め込んでいたものが出てしまったのだろう。Aは堤防をなくした川のように涙を流し始めた。こんなときなのに、弱いところさえ愛おしいだなんて。
「……怖がらせたか?」
「……うん、少し……怖かった」
「そっか。ごめんな、オレがもう少し落ち着けば良かったよな」
「三ツ谷君は、悪くないよ。助けてくれただけやん」
それはそうかもしれないが、八つ当たりも込めた手荒な方法を使ってしまったことにかわりはない。もとはと言えば、あれだけ人が多いなかAの様子を気にしてやれなかったのが悪いわけだし。
……何故、初めからすがってくれなかったのだろう。東卍メンバーがいたからとか迷惑をかけたくなかったとか、彼女なりに考えることはあったのかもしれないけれど。もし後者ならそんなこと気にしなくて良かったのに。
好きなのだから、好きな女に頼られたいと思ってしまうのは当然なのだから。今まで散々振り回しておきながら今更自分以外の人間にすがられる方がずっと嫌だ。
彼女が気まずそうに目をそむけた。自分の代わりに彼女がすがろうとしたのがさっきの高校生なら……どうも気にくわない。だって不安になるだろう?
「……オレじゃダメだった?」
「え…………?」
Aを撫でていた手が止まる。
「見ず知らずの男なんかにすがるってことは、オレじゃダメだったってことなんだろ……?」
「そんなわけ……!だって、」
そこで彼女はハッとしたらしく、その先を紡ぐことはなかった。だって__だって、何なんだ。そんなわけないと否定してくれたことは嬉しいけれど、そこで止められたら気になって仕方がないじゃないか。
また俯いてしまったAの頭から手を退け、屈みっぱなしで痛くなった腰を上げた。
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匿名希望:我妻さん(プロフ) - runaさん» ありがとうございます! (2021年8月26日 13時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
runa - お忙しい中三ツ谷君視点も書いていただきありがとうございます。とっても美味しいです(???) (2021年8月26日 11時) (レス) id: 318f1a5b3c (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 宿題がっ…………済まない………だと……?数日間更新しないかもしれません (2021年8月23日 19時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - インパルスって描くの大変すぎません?難しいんですけど…… (2021年8月11日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 彼が語る、幸せな世界線の物語。 (2021年8月8日 2時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名希望:我妻さん x他1人 | 作成日時:2021年8月8日 1時