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「ま、とりあえず作業に戻れよ。あとで痛い目見るのはオマエらだぞ?」
「はぁ〜い。戻りますぅ」
気だるげに部員達は作業へと戻っていった。三ツ谷も三ツ谷で布を縫うことだけに集中する。耳に入ってくるのはいよいよミシンの音だけになってきて、雨音も話し声も聞こえやしない。一種の現実逃避だ。
Aが着てくれたらどれ程嬉しいことか……、そう思った時にふとあることに気づいてしまった。自分としたことが色合わせを想像だけでしている。たぶん大丈夫だろうけど、A型の性というのは面倒くさいもので。
(ちゃんと色合わせてやりてぇよな……)
そんなことをしたら始めからになることはわかっているけれど、そう思ってしまうのだ。そのせいで集中の切れた耳に覚えのある声が入ってくる。__Aだ。Aと後輩の話し声。思わず立ち上がって扉の向こうを見ると、彼の求めていた彼女がそこにいた。
三ツ谷は動揺のあまり目を見開いたままそちらまで歩く。そして軽く頬を掻くと、ちょっと来てくれ、とAを室内に招き入れた。
「何?」
「少し色合わせがしたいんだ。トルソーでやるよりちゃんと人肌でやった方が納得いくからな」
「なるほどね。迷惑じゃなかったなら嬉しいよ」
「迷惑なわけねぇだろ。来たってことは製作終了か?」
「終わりましたっ…!」
「さすがだな」
彼は先程まで縫っていた白い布をAの腕にあてがう。あまり日に焼けていない彼女の肌は白く、その白い布が映えるか少し心配だったがそんなことはなかった。
念のためもう1枚別の系統の白い布もあてがい、やっぱりこっちだな、とその白い布はしまった。やはり彼女を基準に色合わせをしなくては納得は得られない。Aは本当に自分で色合わせして良いのかと疑問に思ったようだが、何も言わなかった。
「ありがとな。暇ならここでゆっくりしてけよ」
「いいの?私 部外者やけど」
「別にいいよ。正直いてくれた方が気が楽なんだ」
「……ならそうする」
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匿名希望:我妻さん(プロフ) - runaさん» ありがとうございます! (2021年8月26日 13時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
runa - お忙しい中三ツ谷君視点も書いていただきありがとうございます。とっても美味しいです(???) (2021年8月26日 11時) (レス) id: 318f1a5b3c (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 宿題がっ…………済まない………だと……?数日間更新しないかもしれません (2021年8月23日 19時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - インパルスって描くの大変すぎません?難しいんですけど…… (2021年8月11日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 彼が語る、幸せな世界線の物語。 (2021年8月8日 2時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名希望:我妻さん x他1人 | 作成日時:2021年8月8日 1時