検索窓
今日:15 hit、昨日:14 hit、合計:80,473 hit

事の発端 ページ3

クラス替えが終わり、だんだんクラスメイトにも馴染み始めた時期。梅雨に入る前の微妙な気候の中……事件は起こった。


今日の理科はイオンについて調べるとかなんとかで、実験をする時間だった。クラスメイト達は退屈な授業より実験の方が好きなようで、少し騒がしい。その様子を彼女__一Aは呆れた顔で見ていた。


クラスで3番目に可愛いタイプ、そう男子達が言っていたはずだ。常にマスクを付けているため表情は読み取りにくいが、決して悪い人ではないことは周知の事実。なので初めから好感度が高い部類には入っていた。


(あっちから話しかけて来るとはな)


そういうわけで、理科室での席が近いこともありペアを組んだ2人だが、まさかこうなるとは思ってもいなかっただろう。


実験の過程で汚れてしまった試験管を洗うのに、Aのセーラー服の袖はとても邪魔だったらしい。だから彼女は三ツ谷に頼んだのだ。


「ごめん、ちょっと袖捲って」


「いや先に捲っとけよ……」


「それはそうなんだけどね。ホントごめんよ」


「別に良…い…………は?」


それが失敗だった。Aの袖を捲った瞬間に三ツ谷はフリーズした。別に女子の生腕に思わず……みたいな理由ではない。八戒じゃあるまいし。


彼の視線の先には……蝶や花、蔓といった女子らしいデザインの刺青があった。何を隠そう、目の前のクラスメイトの腕にだ。


「あっ」


それに気づいたAもフリーズしたため、蛇口から垂れ流しにされた水の音だけが2人の耳に入る。そして2人は同時に行動を起こした。


Aは試験管をまとめて水に突っ込み、僅か3秒で試験管立てに戻すという荒業を。三ツ谷は彼女の袖を引っ掴んで下ろすという大事な仕事を。


たかがそれだけの行動なのに、2人の呼吸はとんでもないことになっていた。ハァ、ハァ、と息を吐き、片付けるためにビーカーを手に取ると、Aに告げられた。


「あとで生徒会室な」


と。

*→←※リープ前



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (114 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
431人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

匿名希望:我妻さん(プロフ) - runaさん» ありがとうございます! (2021年8月26日 13時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
runa - お忙しい中三ツ谷君視点も書いていただきありがとうございます。とっても美味しいです(???) (2021年8月26日 11時) (レス) id: 318f1a5b3c (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 宿題がっ…………済まない………だと……?数日間更新しないかもしれません (2021年8月23日 19時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - インパルスって描くの大変すぎません?難しいんですけど…… (2021年8月11日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 彼が語る、幸せな世界線の物語。 (2021年8月8日 2時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:匿名希望:我妻さん x他1人 | 作成日時:2021年8月8日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。