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自宅に着いても、脳裏に浮かぶのはAのことばかりだ。両親の帰りがどのくらい遅いのかはわからないが大丈夫だろうか。雨も強いし、カーディガンを貸したとは言え寒いだろう。


「……やっぱり放っておけねぇワ」


「お兄ちゃん?」


「わりぃ、ちょっと行ってくる。風呂沸かしといてくれ」


ルナにそれだけ言い残して傘を片手に自宅を出る。どしゃ降りの雨の中を全力で走り出せば当然濡れてしまうが、そんなこと気にしてられない。


ただ彼女のためだけに走る。Aが苦しい状況にいることを知っていながら放置するなんて、三ツ谷にはとてもできやしないから。ただ、それだけ。


「っは……はぁ……」


気づけばAの自宅に着いていた。息を整え、傘を投げ捨てて彼女の手を引く。彼女は随分と驚いた様子で、夕陽色の目を三ツ谷に向けた。


手が冷たい。心なしか血色も悪くなっているし、目もうっすらと潤んでいる。


「……風邪引くぞ」


「何で、さっき帰ったはずじゃ」


友達(ダチ)、しかも女がこんな状況なのに放置するわけねぇだろ。ウチなら空いてるから泊まってけ」


スッと口から出た言葉に内心驚いた。泊まってけ、なんて。相手は同級生の女子なのに。困らせてしまったのだろうか、Aは俯いた。


「……寒いですね」


……彼女のその言葉は、まるで一本の矢の如く三ツ谷の胸に突き刺さった。彼女はその言葉の意味をわかっているのか?いや、きっとわかっていないだろう。単純に寒いだけ。きっとそうだ。


「ほら、やっぱりな」


「……抱き締めてほしい」


「……ぇ」


Aはそんな彼の思いを見事に裏切った。彼女が他の人には見せることのない、弱々しい姿で三ツ谷にすがりたがっている。それって、そんなのって。


(オレだけが特別みたいじゃねぇか)


頬が一気に熱くなった。Aが顔を上げたので、咄嗟に目をそらし緩んだ口元を隠す。どうやら優越感と羞恥心だけが表に出てしまっているようだ。


見られる前に、と三ツ谷は掴んでいたAの手首をゆっくりと解放する。そのままおずおずと彼女の背に手をまわした。そっと自身の背にまわった腕にまた優越感が掻き立てられる。自分はこんなに悪い人間だったかと、彼女の冷えた体温と共に感じた。

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匿名希望:我妻さん(プロフ) - runaさん» ありがとうございます! (2021年8月26日 13時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
runa - お忙しい中三ツ谷君視点も書いていただきありがとうございます。とっても美味しいです(???) (2021年8月26日 11時) (レス) id: 318f1a5b3c (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 宿題がっ…………済まない………だと……?数日間更新しないかもしれません (2021年8月23日 19時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - インパルスって描くの大変すぎません?難しいんですけど…… (2021年8月11日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 彼が語る、幸せな世界線の物語。 (2021年8月8日 2時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:匿名希望:我妻さん x他1人 | 作成日時:2021年8月8日 1時

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