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「うわ……寒っ」
長袖とは言えセーラー服1枚しか着ていないAは身体を震わせた。三ツ谷は愛用のカーディガンを着ているので言うほど寒くはないが、彼女はそうもいかないだろう。
彼女は彼のカーディガンをチラ見して、はぁ、と溜め息をついた。なんだか可哀想になってくる。
「…これ着るか?」
自信のカーディガンの裾を軽く引っ張りながらAに問う。幸い鞄の中には学ランが入っているし、彼女に貸し出しても問題はない。サイズが……少し大きいくらいだ。
「いいよ、防寒具持ってこなかった私が悪いし」
「でも寒いんだろ?」
「寒い……寒い、けど」
「なら大人しく着とけよ」
三ツ谷はカーディガンを脱ぎ、無防備なAの肩にかけた。やはりサイズの問題で肩から落ちそうになったのを彼女の手が制す。そして彼女は彼を見上げた。
彼を心配しているのだろう。実際カーディガンを脱いだことにより寒さに襲われているところではあるが、彼女に寒い思いをさせるよりはずっとマシだ。それにこの寒さもすぐなんとかなる。
「これだと三ツ谷君が寒いやろ」
「オレは学ラン着ればいいから。女は身体冷やしたらダメだろ」
鞄から学ランを出し、袖を通す。これが2人共防寒具を身に付けられるベストな方法だろう。せっかく可愛いのだから風邪をひかせるわけにはいかないし。
「……ならお言葉に甘えて」
Aがカーディガンに袖を通したのを確認すると、傘をさして2人雨の中を歩き始めた。雨は激しくなる一方で、いつ警報が出てもおかしくない。送っていこう。
**********
Aの住む一軒家に着いた。しかしドアの前に立つ彼女の様子がどうもおかしい。鞄を確認し続けているのだ。__まさか。
「どうした?」
「家の鍵置いてきたかもしんない」
嫌な予想は当たってしまった。今から取りに行っても学校は閉まっているだろうし、この雨の中もう一度往復させるのは気が引ける。
「親はいねぇのか?」
「共働き。いっつも帰ってくるの遅いんだ。ちなみに一人っ子だよ」
「マジか……。どうすんの?」
「いつも通り帰ってくるまで待っとくよ。送ってくれてありがとね、バイバイ」
有無を言わせぬようにAは彼に手を振った。仕方なく踵を返し、帰路につく。
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匿名希望:我妻さん(プロフ) - runaさん» ありがとうございます! (2021年8月26日 13時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
runa - お忙しい中三ツ谷君視点も書いていただきありがとうございます。とっても美味しいです(???) (2021年8月26日 11時) (レス) id: 318f1a5b3c (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 宿題がっ…………済まない………だと……?数日間更新しないかもしれません (2021年8月23日 19時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - インパルスって描くの大変すぎません?難しいんですけど…… (2021年8月11日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 彼が語る、幸せな世界線の物語。 (2021年8月8日 2時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名希望:我妻さん x他1人 | 作成日時:2021年8月8日 1時