ぬくもり ページ12
放課後の部活は楽しいと思う。妹にぬいぐるみを作ってやった事をきっかけに趣味になった手芸だが、こうして部活にしてみると練習にもなるしなかなか面白い。
圧倒的に女子率が高い故にノリについていけないことはあるが、それでも部員達は部長である三ツ谷をよく慕ってくれる。今の時期は……特に。
この時期の手芸部は正念場だからと空気が張り詰める。当然、ぺーやんが訪ねて来れば全員が睨むし頼られる回数も増える。外はどしゃ降りの雨、期末テストも近いし仕方ないだろう。
「部長ー、ここ見てください」
「ん?ああこれか。ここは先に縫っといた方が良いな」
「部長、この色の布ってまだありましたっけ?」
「それならまだストックがあるぞ」
部員達と軽く問答を交わしながら自分の製作も進めていく。今回仕立てているのは十字架で飾った白いワンピース。というのも、デザインを考えていた時にAの姿が脳裏に映ってしまって。
気づけば彼女に着てほしい服、というテーマでデザイン画を完成させていた。まあ彼女に袖を通してもらうかは別問題なのだが。
キーン コーン カーン コーン
部活終了のチャイムが鳴った。作業の手を止めて起立し、号令をかけると三ツ谷以外の部員達は早足で家庭科室を出ていった。
一気に静かになる。ギリギリまで作業しようかとも思ったが、片付けにも時間がかかるし気が乗らない。仕方なくミシンや布を片付け、鞄を片手に家庭科室を出た。
「……やまねぇな」
勢いを増す雨はとてもやみそうにない。仕方なしに靴箱へと踵を返すと、向かい側の廊下で見知った顔の女子がこちらを見ているのが見えた。ハーフアップツインテのマスクっ子、Aだ。
家庭科室の扉を閉め、傘を持ってそちらに向かう。
「よっ。そっちも部活終わりか?」
「まあね。粘ろうかと思ったけどそんな気分じゃなかったわ」
「こんな天気だしな。帰ろうぜ、送ってくよ」
「いいん?ありがと」
靴箱で靴を履き替えた。普段ならまだちらほらと生徒達がたむろしている時間帯なので、2人を茶化そうとする人も少しだけいたかもしれない。しかしこの時期はやはりそういう人々も帰ってしまうらしい。
今、靴箱には2人しかいなかった。
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匿名希望:我妻さん(プロフ) - runaさん» ありがとうございます! (2021年8月26日 13時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
runa - お忙しい中三ツ谷君視点も書いていただきありがとうございます。とっても美味しいです(???) (2021年8月26日 11時) (レス) id: 318f1a5b3c (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 宿題がっ…………済まない………だと……?数日間更新しないかもしれません (2021年8月23日 19時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - インパルスって描くの大変すぎません?難しいんですけど…… (2021年8月11日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 彼が語る、幸せな世界線の物語。 (2021年8月8日 2時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名希望:我妻さん x他1人 | 作成日時:2021年8月8日 1時