【東卍】好きだから、近付かないで。【柴八戒】 (ページ10)

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はち…… ページ10

二中近くの倉庫まで涼しくなってきた秋の風と共に走り、着いたら入り口の前で下ろされる。ホームルームまで10分を切っていたら遅れ、というのが遅刻か否かの基準なのだが、恐らく余裕で間に合うだろう。

まったく、本当に良い船に乗り込めたものだ。これで三度目の飛び入り乗車(乗機？)なのだが、毎回嫌な顔１つせず載せてくれるのだから何だかんだ三ツ谷も後輩に甘い。

それだけの恩を重ねられたら無愛想になろうにもなれず、唯一Aが懐いている人でもあったりする。話すようになったのはあまりにも彼女の手先が不器用だったから……そしてそもそも同じ手芸部に所属していたからか。

「っし、行こうぜ。貸しは今度の買い出しの付き添いでチャラにしてやっから」

「なんて寛大なお心、痛み入ります。先輩がいなかったら面子が潰れるところでした」

「そもそもパルクールで通学しようとする方がおかしいんだよ。ほら今の間に制服払っとけ。学校着いたらちゃんと手ぇ洗わねぇと本汚れるぞ」

「はぁい……。というか、そもそも三ツ谷先輩こそ何で今日はバイク登校なんです？」

「部活、幹部会、夕飯、マナルナのデザート」

「お疲れ様です」

さすが暴走族と中学生を両立できる男。自身の兄と似通いすぎて既視感しか覚えない。

受け身を取った際に砂が付いたセーラー服を手でパッパッと払い落としていく。その手も決して綺麗とは言えないが、汚したままよりは幾分かマシだろう。後で洗えば無問題(モーマンタイ)。

そのまま十数分も歩けば二中の校門が見えてきた。時計の針が指し示すは8時10分。ホームルームが始まる20分前。普段到着する時間と何ら変わらない。本当に今日は幸運だったようだ。

「やった……！面子が守られた」

「まぁプライドは大事だよな〜……っと、うっせぇのが来たワ」

「……え？」

「タカちゃ〜〜ん！！おはよ！」

「ほら来た」

向かいの歩道側からブンブンと手を振る青い髪の高身長。その姿を見てあ゛っ゛と濁点を２つも付けた酷い声が口から出てしまう。

そうだった。そういえばそうだった。自分が遅れてしまうかもしれない事ばかり考えていたせいで忘れていた。彼は……三ツ谷隆という先輩は、あの柴八戒という男にこれでもかと言うほど好かれているということを。

「お前ホント朝からうっせぇのな。静かにできねぇのかよ」

「だってタカちゃん呼ばないとスルーするじゃん！」

「わかった１回黙れ」

どうしよこの状況。