【東卍】好きだから、近付かないで。【柴八戒】 (ページ17)

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じゅうよんページ17

蝸牛もビックリなマイペースさで歩道をノロノロと歩いて行く。ベストを一枚着たとはいえやはり少し寒く感じるのは低くなってきた外気温のせいだろうか。体感温度が低いからかもしれない。

道中、登下校の度にいつも通るコンビニの前を通りかかった。ピッポーッと軽やかで特徴的な電子音と共に自動ドアが左右に開く。特に寄る予定はなかったのだが、身体は店内へと吸い込まれていって。

そういえば喉が乾いていたのだ。今まですっかり忘れていた。何人かの客が横行する店内をAは一直線に弁当コーナーへ。正しくは弁当コーナーの真横のパックジュース等が並べられた棚へ。

特にこれといって飲みたいものはないが、強いて言うなら温かい蜂蜜レモンが飲みたい気分だったのだ。オレンジのラベルの厚いペットボトルを手に取って、他の品々には目もくれずレジへと向かう。

「お会計138円でーす」

さっさと会計を済ませて出たコンビニの外はいつもと違う景色に見えた。まぁそれもそうか、このコンビニはあまり利用したことがないのでなかなか見ない視点だから。

手持ちのトートバッグに蜂蜜レモンをしまい込み、目の前の信号を渡って真っ直ぐ歩いて行く。公園に向かうルートを通るのはいつぶりだろうか、知らぬ間に見覚えのない花まで咲いている。

遠目で見た感じ、意外にも公園内には誰もいないようだった。これは好都合だ。静かに屋外で読書ができる機会なんてそうそうあったものではない。

Aは公園へ足を踏み入れた。公園内にはジャングルジムやらブランコやら申し訳程度の遊具が設置されており、多少は広いのにその分狭く感じてしまう。簡単にいえばサイズと配置ミス。アンバランス。

「変わんないなぁ、ここは」

あんなに周りは変わっているのに、この公園だけは時間でも止められたかのように変化がない。きっとそうなるように整備されているのだろう。そう考えたらなかなか愛された場所でもあるのだなと。

取り敢えず座るために近くのベンチへと歩み寄る。木製のベンチはほんのりと風化しているものの、そこもやはり手入れされているのだろうか、比較的綺麗な方だ。そこにぽす、と腰を下ろす。

トートバッグはその隣に置いて、まずは一服、買ったばかりの蜂蜜レモンを手に取った。キャップが固くてなかなか開かない。意地だそんなもん。

ギリギリと奥歯を噛み締めてキャップを開け、一口ゴクリと喉の奥へ流し込んだ。優しい甘さと温かさが堪らない。やっぱこれだな。