【東卍】好きだから、近付かないで。【柴八戒】 (ページ16)

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じゅうさんページ16

翌日。よく晴れたいい天気だ。イベント事には目がないパーリーピーポー達はスクランブル交差点辺りにそろそろ集まるや否やと沸き立つ頃だろう。日本とメリケンでは文化の違いが大きいから。

まぁ、かくいうAは性懲りもなく借りてきた本を熱心に読んでいるのだが。一緒に過ごす相手が身内だけならハロウィンなぞ平日に等しい。その身内に裏切られたがために完全に平日へと変わってしまったのだ。

どうせやることなんて無いし構わないか。抗争があるらしい日に外を出歩く方が危ないし。

うだうだ、ゴロゴロ。読んでいる本は島田荘司の"占星術殺人事件"。どんなトリックなのかを深く考え込まされてなかなか面白い。それがミステリー小説の醍醐味なのだが、予想外を突かれた時の衝撃といったらもう素晴らしいもので。

「Aー」

「……何、良いとこだったのに」

それを邪魔する兄は蹴り上げてやりたくなるものまた道理であろう。

「ホンットごめん。いや、マジで私情で悪いんだけどさ、今から遊びに出てくんねぇか……？彼女来るんだよ……」

「あぁそうなの。なら分かった、出る」

「おぉ、サンキュ」

「明日のTreatすっごく期待してるからね」

「2000円で勘弁な……」

ほう、湿気てんな。しかしまぁ兄の彼女さんのご要望も入っているのならそれで手を売ってやっても良い。優しい妹にせいぜい感謝し崇めるのだな。

そうと決まれば着崩していた部屋着の白シャツに一枚ベストを被せて、手近なトートバッグに幾つかの本と携帯、財布だけ放り込む。

家の鍵も一応入れておくくらいか。行ってきます、とチョコに目が眩んだ満面の笑みで自宅のドアを開けて行けば兄のげっそりした顔が目に浮かんだ。さてと、どこへ向かおうか。

(図書館まで行っても良いけど面倒臭い……)

考えなしに出てきたから食欲も物欲も薄く、またやる気もない。取り敢えずは近くの公園にでも向かった方が楽なのではなかろうか。

雲ひとつない秋空の下、まるで今からカレッジにでも行くかのような服装で公園。なんとも不釣り合いだが家までの往復を考えたらそこがベストアンサーな気がするし。

開いたエレベーターに乗って１階まで降りる。エントランスは外が明るいにも関わらず照明の無駄使い。何故こういった建物は節電の二文字の素晴らしさを知らないのだろうか。

体力も節電命。特に急ぐこともなくゆっくり、ゆっくりと歩みを進めてエントランスを出た。