【東卍】好きだから、近付かないで。【柴八戒】 (ページ13)

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じゅういちページ13

まぁでもどうせ高野が勝手に騒いでいるだけなのだろう。どの先輩だろうがこちらに用はないと思われる。つまり起きることに意味はない。おやすみ。

高野に肩を揺さぶられ眼鏡が額にガンガンと当たる。正直痛いし先輩が来ていると言うのなら名詞をもう少しハッキリしてくれないと興味の持ちようもないことをわかってほしい。

「ねーえー白ちゃーん！先輩来てるってば！」

「うっさい……！そう言うならせめて名前出してくれる！？」

「もーぉ！柚葉先輩だってば！！」

「えっ」

眠気も思考回路もなんなら眼鏡も吹っ飛ぶ勢いで頭を上げた。思わず反射的に、だ。

柚葉先輩といえば何を隠そう柴八戒の実の姉。１つしか違わないとはいえ大人びていて、そこいらの不良とならやり合える強さを持っているとか。弟とはそこまで似ていないもののこれまた容姿端麗な顔立ちであることでも有名。

高野の言い方からして廊下の外にいるものとばかり思っていたが、この教室に入って来てふーん、と室内を見回しているではないか。

八戒は廊下にいるしこちらに用はないはず。気まぐれか？それにしては何か探しているように見えなくも……。

「あ、いた」

お探しのものはAでしたか。

「Aちゃんってアンタだよね？三ツ谷が来月の予定表先に渡しとくって言ってたんだけど」

そう言う彼女の手元ではA4サイズの１ヶ月の大まかな予定が記された予定表がヒラヒラ揺れている。わざわざこんな所まで渡しに来てくれたのだろう。

「あ、はい私です。わざわざありがとうございます」

「ついでだからいーよ。八戒に地理の教科書貸しに来たのが本命だし」

「あぁだから……何かソワソワしてたんだ彼」

「そういうことだな。さて、用事済んだし帰るわ」

「ありがとうございました」

「柚葉先輩またねー！」

「高野は声量の調節鍛えろ。それじゃ、八戒のことよろしくね」

「ぇ」

困惑する彼女を置いて柚葉は教室を出ていった。廊下で見崎と話す八戒の肩をポン、と一回叩いて。

これは……バレているのか？かなりのブラコンだと聞く彼女なら気付いていてもおかしくはない。思春期真っ只中の男子中学生がわざわざ自分の姉にそういう話をするとは思えないが、そもそも話していたらバレるもクソもない。

最後の最後に爆弾を置いてお帰りなさった。無情にもチャイムは鳴り響いてしまうというのに。