【東卍】好きだから、近付かないで。【柴八戒】 (ページ12)

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じゅうページ12

珍しく授業は手付かずだった。

頭の中を平仮名３文字が占領していた。まだ読み途中の"続堕落論"のことなんか全く頭に無かった。あまりにもボーッとしていたので保健の時間に養護教諭に大丈夫かい？と聞かれたことは覚えている。

なんでも養護教諭は恋バナ好きらしい(聞いてもいないのに教えられた)ので、恋でもしてるのかと聞かれて動揺したのは気の所為だと思いたい。変な所で大人は意地悪だ。

「白ちゃーん？生きてまーすか！」

「これが生きてる様に見えるならアンタは一生老廃物でも食べたらどう？」

「えぇ〜ひっどいなぁ。生存確認だよ、ほら人間生きてるか死んでるか分からないのが１番面倒くさいじゃん」

「そうね」

「だからやっぱり死んだら死んだ！って言って欲しくない？」

「遺書か遺言にしては随分とアホな発言だとは思うけどそうね」

机に突っ伏して寝たフリをしていたのに鬱陶しい。だが気が紛れるという意味ではありがたい存在の高野。多分彼女は過去に３〜４回はプシコと呼ばれたことがあるんだろうな、なんて。

今日もまた換気のためと開かれた窓の向こうから彼の話し声が聞こえる。相変わらず良い声でずっと聞いていたいけれど、今はあまり聞きたくない。でもギュッと腕に力を込めて強く顔を埋めて、耳を塞ごうとするけれど塞げなかった。

腕の位置が悪い。手で塞ぐ以外にナチュラルに耳を塞ぐ方法がない。最初から静かに聞いておく以外の選択肢を用意されていなかったのだ。言葉は悪いが敗北感というか屈辱的というか、羞恥。

「ねぇ白ちゃん昨日ちゃんと寝た？やっぱ変だって」

「変態に言われたくないわ」

「まぁ天下の美術部員だからね！まともな先輩見たことない！」

「一(にのまえ)先輩は？あの人凄く絵が上手って聞いたけどやっぱり変人なの？」

「んー、比較的マシだけど雑食系ガチオタだから」

「あぁそう」

この学校の美術部員が色んな意味で変だと言うことはよく分かった。

はぁ、と雑音をシャットアウトするために目を閉じる。休み時間はまだ８分もあるし本気で寝ない限りは目が覚めるだろう＿＿。

そう思ったら廊下が急に騒がしくなった。こんなに騒がしくなるのは他学年の生徒が廊下に来た時くらいだ。場合によっては静まりかえったりもするが、つまり、まさか。

「ちょ、おーい？白ちゃん起きて！？先輩来てる！」

いやどの先輩だよ。