【東卍】好きだから、近付かないで。【柴八戒】 (ページ11)

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きゅうページ11

「そういやタカちゃん今日集会だっけ？ハロウィンもうすぐだもんね」

「まぁな。マイキーと一虎のいざこざがこんなデッケェ抗争に繋がんだから大したもんだよホンットにさ」

……抗争？彼が近くにいる、という事実よりも２人の口から出る暴走族間の内部情報にAは耳を疑った。今は10月29日、ハロウィンまでは2日。

不良漫画やら不良小説やらを兄から貸してもらったことがあるので、抗争に関しては知らなくはない。だが実際に知り合いがそれに参加するとなるとやはり何か思うところがあるのは普通だろう。

空想だと思っていたものが突然現実に現れたような＿＿そう、そんな感じだ。

「先輩、抗争って」

「あっ」

「あ」

つい口を開いたのが間違いだった。そもそもあまり身長が変わらない三ツ谷の隣にいながら今まで気付かれなかったのが不思議なのだが、パチッと目が合ってしまって。

気まずそうに目を逸らせば八戒も同じように目を逸らしたようで、間に挟まれた三ツ谷が何やってんだコイツら、という目をしているのが嫌でもわかる。やめろそんな目で私を見るな。

「おい八戒、オマエ歩きながら強制停止(フリーズ)すんじゃねぇよ」

「あ、ごめん……つい」

「何、オマエら何かあったの？」

「いえ別に。やっぱ何でもないので私先行きますね」

とにかくその場から逃げようと会釈だけしてそそくさと靴箱に競歩で向かう。何か察したような目線を後ろから感じるのは気の所為だろう。勘のいい先輩はいないと信じたい。

靴を履き替えて駆け足で階段を上がり、教室に入るよりも先にトイレに駆け込んだ。個室に入る前に携帯のことを思い出して、周りの目がないことを確認するとポケットから携帯を取り出し今度こそ個室へ。

騒ぐ胸を抑えておずおずとメールを開く。確認してみたら、昨晩送ったメールには既に返信が届いていたようだ。

『ありがとうございます。おやすみなさい』

彼の返信もまた自分が送ったものと同じようにとても端的でシンプルなものだった。ノリが同じで少し安心する。

確認できたならもう良いや、と個室の鍵に手を掛けた。が、そのタイミングでブーッと手に持った携帯がバイブ音を鳴らし、驚きのあまりその手を離してしまう。

送り主は今しがた逃げたばかりの＿＿。

『おはよ』

「……酷いよ、ズルい」

驚かせておきながら内容は平仮名３文字なんて。その３文字がこんなにも愛おしいなんて。目が合っただけで強制停止するクセに。