すいかとみかんとママレード(黒×橙) (ページ43)

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(Ren side)

「康二急いでー！」
「もう置いてくぞー」
「それだけは嫌や！...ああごめんごめん」

猛ダッシュで家から出てきた康二を見て、Aと笑い合う。

また、3人での毎日が戻ってきた。

もうあの頃みたいな苦しい思いとか、何とも言えないドキドキした気持ちは、俺の元から姿を消していた。

幼馴染ってポジションはやっぱ俺の性に合ってるらしい。

.

今なら言える。

ラブストーリーに脇役なんていないんだって。

選んだ人間も、選ばれた人間も、選ばれなかった人間も、その人にしかわからない感情があって、時には葛藤があって、その人の世界はその人の目線で回っている。

確かに俺は、選ばれなかった。
当時の自分が思い描いた結末にはならなかった。

だけど、あの恋の主役は、俺だ。

Aからしたら主役はAで、康二からしたら主役は康二で。

そういうものだと思う。

だから俺は自分のことを、可哀想だとか思いたくない。

苦しいことばっかだったけど、あの恋を通して、俺ら3人の絆は深まったし、康二の過去を俺やAが知ることもできなかったかもしれない。

だから、決して悪いことばっかじゃないんだ。

.

「明日からテスト期間で部活なくなるね」
「本当だ」
「ほな放課後時間できるやん、何か食べよう！何がいい？俺はたこ焼きかなー」
「えー私たい焼き」
「俺ラーメンかな。でも明日になったらパンとか食べたくなってるかも」
「出たよ気分屋」
「ラーメンからパンに変わるか普通」
「じゃあ俺だけで行ってくる。2人は真っ直ぐ帰れよ」
「やだ！」
「俺も嫌や！」
「じゃあ明日また決めよう！」
「結局そうなるんかい！」

3人の笑い声が鳴り響いた。