27 ページ28
「やばいじゃんこの量...」
俺の教室で机を向かい合わせ、宿題を広げてすぐ、Aが顔をしかめる。
「俺毎年こんなもんじゃない？」
「今年それ以上だよ。とにかく片付けよう！」
「ねえ、これどうやって解けばいいの？」
「これは...」
「あーここの漢字出てこねえ」
「熟語の意味的にさんずいだよ」
「そっか...じゃあこう？」
「正解！」
手伝いながら、俺に嫌な顔せず教えてくれるA。
気付けばこういう所も好きになってて。
この時間が幸せで、宿題終わらせたくないとまで思った。
「あー終わった！」
同時に伸びをする。
Aが手伝ってくれたおかげで倍のスピードで終わったけど、それでも時間は昼をかなり回っていた。
「疲れたから休ませて...」
「ご飯食べねーの？」
「うん、ちょっと寝る」
「じゃあ俺も」
うつ伏せになりながらそう言い、Aの顔を盗み見る。
目が合うことはない。
それどころかすぐ寝落ちした。
「まだ起きねーじゃん...」
夕暮れ時も近いのに、まだすやすや寝ているA。
あまりにも気持ちよさそうだから起こすのもやめて、Aの髪にそっと触れながらまた見つめる。
今までずっとAの一番近くにいたんだから、告白のチャンスなんて無限にあったのに。
なのに今好きになって本当にごめん。
だけど、
康二と出会って、"彼女"としてのAを何度も何度も目にしてたら苦しかった。
「...お願いだから、
俺の傍にいて...」
聞こえるか聞こえないかで呟いて、気付けば顔を近づけて、
そっと唇を重ねていた。
Aは目を覚まさない。
気付いていない。
だけど、
ガタッ。
教室のドアの音がしてはっと振り向いた。
心臓が止まったような感覚がした。
.
「...康二」
「...バイバイ」
誰が見ても分かるぐらい、康二は無理して笑顔を作っていた。
そして翌日から康二は、理由をつけて一緒に登下校しなくなった。
そして、数日後。
俺の家を訪ねてきたのは、目を赤くした好きな人。
「...A？」
「...康二に振られた」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キキララ
| 作成日時：2021年9月19日 23時
