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自分でも何故ついたか分からない嘘に辰哉くんは首をかしげる。
「お前が知らないわけないでしょ」
「...いや、Aとクラスも違うからさ」
「でも毎日一緒に登下校してんじゃん。
俺ここまでずっと仲良しの幼馴染見たことないけど？」
仲良しの幼馴染。
聞き慣れた言葉なのに、急に心拍数が速まったように感じた。
「それでも分からないっていうんなら直接聞きに行くか」
「は、誰に？」
「Aに決まってんじゃん」
「いやいややめよ」
「何でよ」
「..どういう関係性にせよ、俺らが邪魔になる可能性高いじゃん」
それなりの理由を作って止めた。
すると、康二がさりげなくAの手を繋いで歩きだした。
その一瞬の出来事に俺はフリーズしてしまう。
だけど同じ光景を見た辰哉くんが叫ぶような勢いだったから、はっと我に返る。
「シーッ、バレるじゃん」
「にしても！！手！！え！？」
「父親かよ...」
だけど俺は、言葉通り辰哉くんに呆れる気持ちは半分、あとの半分はよく分からなくて。
思いっきり肩を落とした辰哉くんは2人と反対方向へ歩いていって、俺も後を追う。
「でもさ」
彼が口を開く。
「A最近やたらと、見た目に気を配るようになったなとは思ってたのよ」
「...え？」
「そういや今朝も、洗面台行ったらすげえいい匂いして、何だと思ったら、見たことない石鹸の香水置いてあって」
「...」
「夜もAの部屋の前通ったら、誰かと電話してること多かったし。恋してんだろうな」
全部、全部、
康二のため。
恋なんて全く縁なかったのに。
電話なんて俺の場合は長くてせいぜい30分。
俺に冷たくなったわけじゃないのに、
それでも、Aが離れていっているという気持ちを拭えなかった。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2021年9月19日 23時
