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数秒、流れた沈黙。
彼は当然、理解が出来ずにいた。
「…え？」
「…」
「…ごめん、何の冗談？」
何も返せない。
それが、私が本気なのを悟ったことが分かった。
「Aあれやで、俺今の会社でカメラマンするんやで？遠距離になるとかちゃうで」
「…うん、分かってる」
「邪魔したらあかんとかそういう理由？」
「…違う」
「じゃあ、俺何か嫌なことした？言ってほしい」
「…違う、」
また、瞳が潤む。
康二くんが言ったような嘘の理由を、並べればよかったんだろうか。
でもそれはやっぱり出来そうになかった。
大好きだから。
康二くんと同じ気持ちだから。
「じゃあ、何で…？」
ーお父さんが同じ人だから。
そんなこと、当然言えない。
康二くんも泣いている。
「ごめん…」
「俺、納得できんよ…」
「…」
「なあA、」
初めて一緒に桜を見た日。
仕事が入って時間に間に合わなくて、心身両方疲れていた私に、
康二くんは温かいレモンティーを差し出してくれた。
スカイツリーを一緒に登って、一緒に景色を眺めた。
内定をお祝いしてくれた日、料理上手で嫉妬もする、色んな康二くんを見れた。
どこまでも幸せだった。
「…ごめん」
「A、」
「…もう、無理なんだ」
口調はそうでなくても、強い言葉を私は投げた。
彼の表情が、深く落ちていく。
その表情は辛うじて一瞬しか見れなくて、私は立ち上がった。
.
「今まで、本当にありがとう」
.
現実から目を背けるように、早歩きで立ち去る私。
康二くんは追いかけてこない。
追いかけられないことも分かってる。
彼との距離が開くに比例して、
両目から涙が流れ続けた。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2024年2月1日 16時
