ふたり(橙) (ページ29)

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康二くんの笑顔が伝染する。

「ただいま。待たしてごめんな」
「ううん」
「ケーキ買ってきてんよ。ご飯の後食べよ？」
「うん、ありがとう！」
「どういたしまして。ほな行こか」

そうしてマンションの中に入ろうとすると、さっきのスーツの男性が出てきた。

その男性と康二くんが目が合い、

「康二！」

「おとん！！何でここおるん！？」

「え、お父さん？」

康二くんが頷いて、お父さんと互いに会釈する。

初めましてなのに、お父さんからは元々の知り合いのような雰囲気を感じた。

醸し出している空気感と鼻にあるほくろが、康二くんとの繋がりを思わせてる気がする。

「出張で東京まで来てな。ついでに康二にも会おうと思って寄ったんよ」
「あ、じゃあ私は！２人で過ごされたら」
「ええんよええんよ！言うて康二もよく帰省しとるし会えるからな。それよりこっちが邪魔して悪いなあ」
「そんなことないですよ」
「おとんほんまにええの？」
「うん、これから新幹線で帰るわ。Aさん、康二のことよろしくお願いします」
「はい。…あの、」

私が呼び止めると、お父さんが「ん？」と返す。

「…あ、気を付けてください！」

私の言葉にお父さんは微笑んでくれて、そのままマンションを後にした。