ふたり(橙) (ページ27)

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「ここかな？」

指定されたおしゃれなカフェ。

店員さんに挨拶されてからすぐ、手を挙げた彼と目が合い私は向かった。

「久しぶり」
「お久しぶりです、先輩」
「もう先輩じゃないけどね」
「あ、確かに」

数年一緒に仕事をしていたこの人と、何も気にせず笑えたのは初めてな気がする。

「じゃあ先輩じゃなくて、宮舘さんですね」

先輩改め宮舘涼太さん。

私が主に上司から色々言われていた時も、ずっと気にしてくれていた。

向き合って顔を見ると、正面のデスクだった同僚の頃を思い出す。

それぞれ注文したものが運ばれてきた後、宮舘さんが口を開いた。

「知ってるかどうか分かんないんだけど。会社、倒産したんだ」
「…え？倒産？」
「うん」

スマホですぐ調べると、もうホームページは跡形もなく消えていた。

「Aさんが会社辞めて、自分もこのままじゃだめだと思って労基に相談したんだ」
「労基に、」
「おかげであの労働環境は明るみになったんだけど、それと一緒に大赤字だったことも分かって。経営が立ち行かないぐらいになって、そのまま会社は畳まれたんだよ」
「そうだったんですね…」

宮舘さんは結果的に従業員を解放させたんだ。

そんな彼を見て、私はふと呟いていた。

「…そういうやり方も、あったんですね」