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「綺麗…」
「ほんまやなあ」
展望台に辿り着いた。
薄暗いけどどこか明るい景色が一面にある。
「ビルがめっちゃ小さく見える」
「本当ですね。地上にいる時は本当に高く見えるのに」
私がそう言葉を返した彼が、持っていたカメラで丁寧にシャッターを切ったから「撮りました？」と尋ねた。
「撮った！」
「ふふ、ですよね」
「コンクールのことで気遣わせちゃってごめんな」
「え？」
「また照兄から聞いてん。俺のために連絡控えてたんやろ？」
「大事な時期だと思って」
「うん。考えてくれてありがとう。
でも、Aさんと連絡取ったり会ったりしたいで」
「えっ？」
「いや何で驚くん。当たり前やん」
「…嬉しいです」
思わぬ返答だったのか、向井さんからは笑みが溢れていた。
「やから今日誘ったんよ。それと久しく会ってないから敬語戻っとる！」
「わ！本当だ」
「戻った人初めてやわ。もう戻らんといてな？」
「…じゃあ戻さないために、」
「ん？」
「…呼び方、お互い変えない？」
向井さんの顔がどこか赤くなる。
「…確かに、名案やな」
「でしょ」
「…A」
「…康二くん」
恐る恐る呼んだ私たち。
一瞬時間が止まったような感覚がしたけど、「俺ら中学生か！」という彼のツッコミで同時に吹き出した。
「そろそろ移動しよっか、A」
「ふふっ、そうだね。康二くん」
「そこに名前ぶっ込むん違和感あるわ」
「人のこと言えないよ」
また同じタイミングで笑って、私たちは歩きだした。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2024年2月1日 16時
