ふたり(橙) (ページ24)

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「ありがとうございました。失礼します」

最終面接を受けた会社のビルを出ると、無意識に安心からの深い息をついていた。

ちゃんと伝わったかな。

でもとりあえず私、

「お疲れ様…」

「ほんまにお疲れ様」

えっ？

声が聞こえた後ろを見た。

「向井さん！？」
「せやで」
「え、何で？どうしたんですか」

フッと笑って向井さんが近づいてくる。

「俺の職場この辺やから」
「そうだったんですか！」
「せやで。ビルから出てくんのたまたま見えてびっくりした」
「お仕事お疲れ様です」
「Aさんも面接お疲れ様」

この前照兄が遭遇したって聞いたと付け加えた向井さんが、「なあAさん」とまた話しかける。

「展望台行こ」

「え？」
「スカイツリーの。これから何か予定あったりする？
あと、スーツやけど足痛くない？」
「ないです。足も大丈夫です！」

パンプスのことまで気遣ってもらえると思わず、驚いたのとありがたい思いで元気に返事した。

「よかった。ほな今から行こっか」
「はい」

私は頷いて、肩を並べ歩きだした。