ふたり(橙) (ページ18)

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(You side)

お母さんA、帰省はいつなの?
お母さん早く帰ってらっしゃい
お母さんあと連絡返して?大丈夫?

「忘れてた…」

お母さんからの帰省の催促。

どうしても気が進まずにいた。

仮にも無職なことは事実だし、それを知られたら本当の意味で帰ってこいって言われるに決まってる。

またため息が出そうになった時、スマホの画面がとある人の名前を示した。

「向井さん」
"あ、もしもし？今家着いた"

家着いたらまた電話する、それをちゃんと実行してくれたのが純粋に嬉しい。

「向井さん。お帰りなさい」
"うん、ただいま"

その後電話口から聞こえた、ふふっという彼の笑い声。

「何で笑うんですか」
"いやなんな、結婚したみたいやなあって"
「ちょっ、話が急です！それに一緒の家じゃないじゃないですか」
"まあそれもそやな。ほな単身赴任ってことにしとこ"

珍しくマイペースさが見えた向井さんがせやせやと続ける。

"Aさんに初めて話すと思うんやけど、俺プロのカメラマン目指しとんねん"
「あ、はい」

岩本さんの言葉を思い出した。

そして写真コンクールのことを向井さんが話す。

"年齢制限で今年がラストやから、特に気合い入ってんねん"
「そうなんですね」

彼の思いが声色からも伝わってくる。

「向井さんが頑張ってるから、私も転職活動頑張ります」
"ええことやけど、今は全然休んでいいんやで？"
「休めてます。仕事してた時と比べ物にならないぐらいには。でも新卒の時後悔したからこそ、今度は頑張りたくて」
"そっか。ほな、お互い頑張り時やな"

向井さんの優しい言葉に頷く。