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ーカシャカシャッ
細かい種類は分からないけど、
カメラのシャッター音なことは分かった。
その音がした隣を見るといたのは、
一眼レフで夢中になって桜を撮っている、
茶髪で手足の長い男性だった。
何枚か撮った写真を確認しているその男性が再び撮ろうとした時、
ふと私の存在に気付いた。
恥ずかしそうにぺこりとお辞儀され、私も慌てて会釈する。
その後も楽しそうに撮り続ける彼を無意識に見つめていると、また視線が合わさった。
「あ、すみません！」
流石に嫌だったかな。そう思って謝ると、
「ははっ、全然」
彼は優しく笑って、私の方に近づく。
手足だけじゃなく身長自体も高くて、羽織っているコートもおしゃれで。そしてまた、桜にレンズを向けた後、
「どうですか？これ」
撮った写真を彼は見せてくれた。
「綺麗です！写真上手なんですね」
「本当ですか？嬉しい」
「カメラマンさんか何かされてるんですか？」
「全然。アシスタントです」
「カメラマンアシスタント？」
「そんなとこです。で、今の七分咲きぐらいの時期から散るまで毎年、ここの桜を撮っとるんですよ」
「毎年？」
「はい。今の時期は満開までワクワクやし、でも散っていく時期は寂しくなるし、毎年してても情緒はグラグラなるんですけど」
「じゃあ、また撮りに来られるんですか？」
まずい、探るみたいな言い方をしてしまったかも。
「はい」
ただ彼は、私のそんな不安に似た感情はさほど気に留めず頷いていた。
「てかお姉さん、こんな朝からお疲れ様です」
「あ…はい」
正確には昨日の朝からですなんて当然言えずにいると、
「お節介ですけど、無理だけはせんといてくださいね」
「あ、はい」
頑張ってください、じゃなかった。
感謝を込めてまた礼をすると彼も返してくれて、私はその場を離れた。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2024年2月1日 16時
