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(Fukazawa side)
高校生活に慣れようとしていたらあっという間に日は過ぎて、GWも呆気なく終わった。
クラスメイトを中心に仲のいいやつもかなり出来て、女の子とも人並みに話した。
ただ渡辺とはまだ話していない。
そして早くも、今日から中間テスト。
学校へ向かっていると、
目が離せない光景が映った。
信号のない横断歩道を腰を曲げながら歩くおばあちゃん。
出勤前で急いでいるのか、スピードの落ちる気配のない車。
.
「ばあちゃん、」
一目散に駆け寄る。
車との距離ができる。
おばあちゃんが倒れないよう引き離すことに努めたら、左足が捻った感覚がした。
「大丈夫ですか?」
「うん、ありがとうね。でもあんたは?」
「ああ、全然大丈夫です」
いや痛い。どうしても顔に出る。
「痛いやろ。ごめんなあ、ばあさんのせいで」
「そんな全然」
「あっ、私湿布持っとるでな、ちょっとそこ座り」
おばあちゃんの元気な様子にただただホッとしながら座る。
「おばあちゃんどこか行かれるんですか?」
「病院。孫が入院しとってな」
「お孫さんが?」
おばあちゃんは「うん」と頷く。
「むずかしい病気で、もうちょっとで手術せなあかんのや」
「手術…」
「娘も旦那さんも仕事あるで、平日は私がお見舞い行って。あの子が大変やで、私は歳のせいにせんと元気でおらなあかんと思っとるでな」
湿布を貼ってくれるおばあちゃんのその言葉に、何だか泣きそうになった。
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キキララ(プロフ) - さあさんさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけたんですね😊作者としてたいへん嬉しいです!ありがとうございます✨ (5月1日 9時) (レス) id: 16c60907ce (このIDを非表示/違反報告)
さあさん(プロフ) - 面白くて一気に読み終えました。情景が浮かんでキュンキュンします。。 (5月1日 7時) (レス) @page46 id: a428b66a33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キキララ | 作成日時:2023年11月19日 17時